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薔薇色に変えて
第6章 見守りながら・・
「コーヒーの味、落ち着いてきましたね」
カウンターに並んで座る三枝さんは一口飲むと、
次に淹れるコーヒーの豆を挽いている成沢さんに声をかけた。
成沢さんが薔薇色で修業を始めてから半年。
コーヒー豆の挽き方から教わり、コーヒーを淹れはじめてからはそろそろ4ヶ月。
この間に新しい年を迎え、明けて冬の寒さの最も厳しい頃に
奥さんの一周忌を迎え、静かに月日の流れを見送りながらも
一生懸命薔薇色で働いている。
来る日も来る日もコーヒーと向き合って、小此木さんと向き合って、
わずかな進み具合だった成沢さんの歩みが、
やっと大きな一歩となった瞬間なんじゃないか。
三枝さんの言葉を聞いて私は静かな喜びをかみしめた。