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薔薇色に変えて
第6章 見守りながら・・
金曜日の夜だからか、店の中はにぎわっていて、テーブル席は全部うまっている。
小此木さんと2人フル稼働でコーヒーを忙しく淹れている。
その忙しさにもすっかり慣れた成沢さんは、
余裕の表情を見せながら三枝さんに頭を下げた。
「そう言っていただけて・・嬉しいです。やっぱりわかるんですね、味の違いが」
たしかに、三枝さんは私達常連の中でも一番味に敏感だ。
わずかな違いに気付くのもいつも三枝さん。
その厳しい味覚の持ち主が、いわゆるOKサインともいえる言葉を口にするとは、
成沢さんもやるものだ。
忙しく手を動かしながらもしっかりと私たちの会話を聞いていた小此木さんが、
「三枝さんのOKが出たんならとりあえず合格点がもらえたってことだね。
さあ、いよいよ僕も楽ができるぞ」
と体を左右に揺らしながら浮かれた表情を見せた。
「そうね、マスターも一人になってからがんばってきたものね。
良いお弟子さんが見つかってよかったですね。
それもこれもみんな私のおかげじゃないですか?」
得意満面の顔を見せつける私に、小此木さんは肩で笑った。
「そうだねぇ、誰かさんが彼が死のうとしているなんて大きな勘違いして
ここへ引っ張って来てくれたおかげだよね、ほんとうにありがとう。
感謝してもしきれないよ」
「また!もうそれを言わないで!」
頭を抱える私を小此木さんだけでなく三枝さんも成沢さんも笑って見ている。
でも成沢さんだけは・・嬉しそうに見えた。