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禁煙チュウ
第15章 ハッピー・エンド(?)
「ちょっとぉなれそめ聞かせてよ宮田君」
「真中ちゃんもうその辺にしときなって」
「だーって」
「宮田君も困っちゃうから、彼女ももう帰ってくる頃でしょ」

石井が出てからテキーラをショットで4杯飲まされた。寝不足もあってか腹と顔が熱い。
時計を見ると9時になろうかというところで、いつもより石井の帰りが遅いなと気になった。
スマホを見ても特に連絡もない。
ちょうど真中さんたち以外のお客さんがきれたところで、
「スンマセンちょっっっとだけ外見てきます」
と店を出る。

ドアを閉める向こうで真中さんの「あー逃げた」の声が聞こえた。
……だってさすがに店でキスしまくってたとは言えない。

だだだと階段を下りる。表に出ると飲み屋街の明るい道の先から石井がやって来るのが見えた。
ぱっと手を上げると石井の視線が上がる。
おかえり、と言いかけて石井が何か持っているのに気付いた。
おつかいの袋とは別に、なにか見たことのあるもの。妙に気になるそれは……。

石井が俺の視線をたどって自分の手を見る。そしてその手を俺によく見えるように差し出した。
俺は目をこらす。それが見えた瞬間「あぁ」と声が漏れた。
石井が持っていたのは、あの日泣いていた雪乃に石井が手渡したハンカチだった。

俺が気付いたことに気付いた石井は手を下ろして近づいてくる。
俺もたまらず走り寄る。
目の前まで近づいた石井の腕を取って引きよせた。往来で、抱きしめる。

言葉を探していると石井が腕の中で呟いた。
「俺はお前が全て正しいと思うことをやめる…」
「!」
驚いて息が止まる。
石井が言ったのは、俺が雪乃の留守電に吹きこんだメッセージだった。
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