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禁煙チュウ
第3章 過去現在
こっちの戸惑いは十分伝わってるはずなのに、彼女は平然と続ける。
「なんでって、飲みたい気分だから」
「えーそれは……よくないんじゃないの」
ちらっと後ろを振り返る。
店のドアは閉まっている。
こっちの声は向こうに聞こえないはずだけど、なんとなく気まずくて俺はビルの階段を下りる。
「なんで」
久しぶりに聞く彼女のムッとした声が耳を刺す。
「なんでって……新妻が旦那の帰り待ってなくていいのかよ」
「あぁ……誰に聞いたの?」
「あぁ? えーと、誰だっけな……」
そう聞かれるととっさに出てこない。
踊り場で立ち止まって考える。
額に手を当てて思い出そうとしたところで、彼女が先回りする。
「ケイタ君じゃない?」
「あー。そうそう、ケイタ」
「そっか。うん、まぁ、そうだよねぇ」
「? なんだよ」
「んー。話せば長いし、そっちで話すわ。じゃあ」
えっ、ちょっと……と言う俺の声はもう彼女には届いていなかった。
通話の切れたスマホから、俺の耳にツー、ツーと機械音が虚しく響く。
「はぁ……?」
今から、来る?
石井がいるこの店に、元カノが?
……ヤバイ。
ド、ド、ド、と心臓が強く打ち始める。
いや別に、石井とはまだそういうちゃんとしたあれじゃないから別にあれなのかもしんないけど、っていうか俺の気持ち的に二人が出会っちゃうっていうのはかなりちょっとキツイっていうか怖いっていうか、いや、でも別にあいつはもう人妻なわけで俺ももう吹っ切れてきてるわけだし今さらどうこうあるわけじゃないだろうしでも話せば長いとかなんの事だか全然わかんないんだけどなんなんだよ一体……
「なんでって、飲みたい気分だから」
「えーそれは……よくないんじゃないの」
ちらっと後ろを振り返る。
店のドアは閉まっている。
こっちの声は向こうに聞こえないはずだけど、なんとなく気まずくて俺はビルの階段を下りる。
「なんで」
久しぶりに聞く彼女のムッとした声が耳を刺す。
「なんでって……新妻が旦那の帰り待ってなくていいのかよ」
「あぁ……誰に聞いたの?」
「あぁ? えーと、誰だっけな……」
そう聞かれるととっさに出てこない。
踊り場で立ち止まって考える。
額に手を当てて思い出そうとしたところで、彼女が先回りする。
「ケイタ君じゃない?」
「あー。そうそう、ケイタ」
「そっか。うん、まぁ、そうだよねぇ」
「? なんだよ」
「んー。話せば長いし、そっちで話すわ。じゃあ」
えっ、ちょっと……と言う俺の声はもう彼女には届いていなかった。
通話の切れたスマホから、俺の耳にツー、ツーと機械音が虚しく響く。
「はぁ……?」
今から、来る?
石井がいるこの店に、元カノが?
……ヤバイ。
ド、ド、ド、と心臓が強く打ち始める。
いや別に、石井とはまだそういうちゃんとしたあれじゃないから別にあれなのかもしんないけど、っていうか俺の気持ち的に二人が出会っちゃうっていうのはかなりちょっとキツイっていうか怖いっていうか、いや、でも別にあいつはもう人妻なわけで俺ももう吹っ切れてきてるわけだし今さらどうこうあるわけじゃないだろうしでも話せば長いとかなんの事だか全然わかんないんだけどなんなんだよ一体……