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禁煙チュウ
第4章 あまのじゃく
それから最後のお客さんが帰るまで、一言もしゃべらなかった。
宮田さんは常連さんと話して、わたしは黙々と仕事。
宮田さんにはこっちを見るまいとする気配が漂っていて、本当に怒ってるんだったらどうしよう、と少し不安になった。

だけどわたしが宮田さんの方を向くと露骨にそっぽを向いたり、ワザと他の女の人に愛想よくしてる感じが見えるとやっぱり可愛いな、と思ってしまうのだった。


午後二時。
雪乃さんが帰ってから五時間ほどして、やっと二人きり。

お店を閉めて、ゴミ出しから帰ってくるとちょうど宮田さんがタバコを口に咥えるところだった。
「あっ! 吸うんですか?」
わたしの言葉に一瞬動きを止める。タバコを咥えたまま腕を下ろす。

「どこから出したんですか。買ってきたんですか?」
「……客の忘れもん」
咥えたタバコをプッとシンクに吐き出す。
「吸ったらだめじゃないですか、せっかく禁煙してるのに。わたしの協力無駄にするんですか」

宮田さんの眉がピクリと動いた。
「協力?」
じっとこっちを見る。
「あ、やっとこっち見た」
宮田さんの眉間にしわが寄る。
はーっと息を吐いて、シンクに手を付いて項垂れる。

「あぁ、もう……」
下を向いたまま、そう小さく呟くのが聞こえた。
ちょっと調子に乗りすぎたかな。
謝ろうかと口を開きかけた時、宮田さんがばっと顔を上げた。
それからドカドカ大股でこちらに歩いてきて、強引にわたしの腰を抱き寄せると、乱暴に唇を重ねた。
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