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禁煙チュウ
第5章 デート
気持ちが、もう雪乃へ向いてはいないと。
そこに雪乃への配慮はない。
俺がこう言えば、雪乃も気持ちを切り替えることができるだろうと思った。涙はさっき流してしまったのだし。
でも、それを聞いた雪乃はくしゃっと顔をゆがませて俯いた。
パタパタっ、とテーブルに涙が落ちる。
驚いて声が詰まる。
「ゆき、の……」
ここで触れたらだめだ。
そう思いながら、思わず伸ばした手は雪乃の手に重なってしまった。
雪乃が顔を上げる。
涙に濡れて、どこか幼く、たよりなく見える。
瞳が揺れて、大粒の涙がこぼれ落ちた。
胸がぎゅっとなる。
本当に、男と言うのは女の涙に弱い。
「あの人とはね、いっつもケンカしてた。なんでかうまくいかなくて。ケンカの度に哲のこと思い出してた。哲なら違うのにって。なんで別れたんだろうって。こんな優しい人と」
雪乃がもう一方の手を俺の手に重ね、愛おしそうに撫でる。
「まだ、切り替えないで。わたしのこと、追い出さないでよ」
雪乃はそう言うと全身で抱きついてきた。
勢い、床に倒れ込む。
雪乃の体がぎゅうっと押し付けられる。泣いているせいで息が熱く、俺の頬や首筋にかかる。
その体の重みを、覚えている、と思った。
そんなことを考えている場合じゃないのに。
顔にかかる髪の匂いも、俺の胸に当たって丸く潰れる胸の感触も。
変わらない。
知っているというだけで、なぜ受け入れてしまうんだろう。
俺は雪乃の背中に腕を回した。
そこに雪乃への配慮はない。
俺がこう言えば、雪乃も気持ちを切り替えることができるだろうと思った。涙はさっき流してしまったのだし。
でも、それを聞いた雪乃はくしゃっと顔をゆがませて俯いた。
パタパタっ、とテーブルに涙が落ちる。
驚いて声が詰まる。
「ゆき、の……」
ここで触れたらだめだ。
そう思いながら、思わず伸ばした手は雪乃の手に重なってしまった。
雪乃が顔を上げる。
涙に濡れて、どこか幼く、たよりなく見える。
瞳が揺れて、大粒の涙がこぼれ落ちた。
胸がぎゅっとなる。
本当に、男と言うのは女の涙に弱い。
「あの人とはね、いっつもケンカしてた。なんでかうまくいかなくて。ケンカの度に哲のこと思い出してた。哲なら違うのにって。なんで別れたんだろうって。こんな優しい人と」
雪乃がもう一方の手を俺の手に重ね、愛おしそうに撫でる。
「まだ、切り替えないで。わたしのこと、追い出さないでよ」
雪乃はそう言うと全身で抱きついてきた。
勢い、床に倒れ込む。
雪乃の体がぎゅうっと押し付けられる。泣いているせいで息が熱く、俺の頬や首筋にかかる。
その体の重みを、覚えている、と思った。
そんなことを考えている場合じゃないのに。
顔にかかる髪の匂いも、俺の胸に当たって丸く潰れる胸の感触も。
変わらない。
知っているというだけで、なぜ受け入れてしまうんだろう。
俺は雪乃の背中に腕を回した。