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禁煙チュウ
第5章 デート
雪乃の背中を支えながら、ぐるんと上下を入れ替わる。フローリングに雪乃の髪が広がる。
「哲……」
俺の名前を呼ぶ声に吸い込まれるように唇を重ねた。
頭の奥が痺れる。
雪乃だ。

俺の手は、雪乃の体を確かめるように勝手に動いた。腰、脇腹、腕、肩、頬、髪。
雪乃の手も俺の背中や肩や腕を撫でている。
その間も唇を重ね合わせ、擦り、吸う。
久しぶりなのに、自然と動きが合う。呼吸が。

柔らかい手触りのニットの下に、雪乃の体温を感じる。
そうだ、この暖かさ。別れてから何度思い返しただろう。でも現実の俺の腕の中には何もなくて。
なのに今、雪乃は俺の体の下で目をつぶって身を委ねてくれている。

いいのか、このまま。
沸騰しそうな頭の中で冷静な声がする。
このまま、してしまって。

元鞘に戻りたいのか?
それとも寂しさを紛らわすため?

体はあの頃と変わりがないと思ったけど、雪乃の真意は解らない。
ふ、と俺の目が開く。
雪乃は目をつぶったまま。

別れ話をされた時だってそうだ。
それは突然で、容赦なく、挽回の余地もなかった。

また繰り返すことになるかもしれない。
また同じ苦しみがやって来るかもしれない。

顔も知らない相手に嫉妬して対抗心で禁煙までして……。

止まってしまったキスに雪乃の目が開く。
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