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禁煙チュウ
第6章 酒は飲んでも飲まれるな
黙々と開店準備を済ませ、店を開ける。ちょうど早い時間に数組客が入ってくれて助かった。
注文をさばいたり雑用をこなしていればそんなに石井と喋ることもない。

話をする覚悟を決めたといっても昨日の事をどう話せばいいのか。
一晩、石井のことが頭から綺麗に消えてしまったことを白状するのだから、愛想を付かされてもしょうがない。

それにやっぱりいくら考えても雪乃の本意は解らないし、時間が経つにつれだんだん胸が重くなってきた。

何度か客が入れ替わり、ふと訪れる静かな時間にも特別話はしなかった。
あとでちゃんと、というのは建前で、何を話せばいいのか解らない、が本音だ。

自分の中で時間の過ぎるのが速くなったり遅くなったりする。
まだ七時か、と思えばあっという間に十時、十一時。
早く閉店時間が来てほしいような、永遠に来ないでほしいような。

石井が俺のことを見ないのも気になった。
二人の秘密を感じるような、一瞬絡んですぐにほどけるあの強い視線を、今日は一度も感じない。

もしかしたらもう気付いているのだろうか。
それで、もしかして今日終わった後話をされるのは俺の方なんじゃないか?
あなたには呆れましたって、雪乃さんとよろしくやってくださいって。
それで俺はまた一人に戻る……。

そんなことを考えていると何度も手が止まり、頭の中が煮詰まってくるのを感じた。

だいたい昨日の今日だ。元カノとセックスして書置きを見てふて寝してすぐ出勤で。
同じ職場ってこういう時はすげーアレだな……と考えて、いやそもそも流された俺が悪いのに、と自己嫌悪に陥る。

だんだん石井の方も見れなくなってくる。
俺は自分のふがいなさと気まずさをごまかすように、客の話に積極的に乗った。
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