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禁煙チュウ
第8章 はじめて その1
ぎゃーーーっと心の中で叫ぶ。
なにこの子。
そんなこと言われて我慢できる男がいるだろうか。

いや、いる。
俺は理性を総動員して石井の肩を掴んで引き離す。
「わかった。わかったからちょっと待って」
「わかってないです」
案外素直に離れたと思ったら、石井はきっ、とこっちを見据えて言いきった。

「な、なに、が」
気おされてどもる。かっこわるい。
「どんな覚悟でここに来たか。雪乃さんがきっとたくさん泊まった部屋なんですよね?」
「う、ま、まぁ……」
「それに、もしかして昨日も」
「……」
答えられない、ということが答えだと、俺も石井も解ってる。

「……わたしが、はじめてだってことを差し置いても、今の宮田さんの部屋に残ってる雪乃さんの気配を早く消したいから。宮田さんの体に残ってる感触を早く消したいから」

ぎゅっと石井が拳を握っている。
「処女なんか嫌かもしれないですけど」
嫌じゃないっ! 大声で叫びそうになるのを堪える。

「さっき泣いたのだって、わたしのはじめてが宮田さんになるって思ったら頭に血が昇って、嬉しいのと怖いのとでぐちゃぐちゃになって」
またうっすら石井の目に光が潤む。

「石井……」
そっと髪を撫でる。石井が目を細める。
睫毛の影が頬に落ちて、瞬きの度にひらひらと羽ばたく。

俺は石井を上向かせると、一番聞きたかったことを聞いた。
まだ、はっきりとは聞けていないことを。
「石井、俺のこと、好き?」
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