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禁煙チュウ
第2章 戸惑う
有無を言わせず金を払わせると
「ありあとやした~っ」
と大きめに挨拶した。他の連れの客に聞こえるようにだ。
別にこのチャラそうな男を早く帰す為ではない。絶対に。

幹事は特に気にした様子もなく連れの方を振り返ると「はい次カラオケ~っ」と元気な声を響かせて店を出ていった。
店に一人残る俺。

カウンター六席、テーブル三つの「狭い」店内が急にシンとなる。
は~っと吐いたため息がやけに大きく聞こえた。
スツールに座って口の中の飴を転がすと、ねっとりした甘みが舌に張り付いた。



午前一時。

グラスを洗っていると石井が帰ってきた。
「あれ? 団体さん帰っちゃったんですか」
「ああ、次はカラオケだってよ」
「なんだ、走って来たのに」
「ごくろうさん」

なるべくそっけなく聞こえるように言う。
なんにも気にしてないぞ俺は。
なんにも意識してないぞ俺は。
目の前のグラスを洗うのに集中する。

ガサガサと袋を鳴らして石井が近づいてくる。
なんにも気にしてない、意識してないぞ、意識してない……

「あれっ」
石井が近くで上げた声にドキッとする。
「な、なにっ」

見ると石井がゴミ箱を覗いている。
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