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17歳の寄り道
第8章 【碧編】誓い
遥が私の右胸を掴む。

「あ…んっ…」

爪を立てられて、痛みで苦悶の表情を浮かべると、すぐに胸を放たれ、手の代わりに唇を当てられた。

甲高い音をさせながら、強く、強く吸われる。

痛いけど…これは遥の印。
私の胸から、遥の唇が離れ、「……ついたかな」と、彼が笑う。

遥のキスマーク。
薄明かりの中でも見えて、満足そうに微笑む遥が愛しかった。



その翌日は、体が重くて、まるで鉛のよう。
学校に行けるような精神状態ではなく、母に学校を休むと言った。

今まで、こんな休み方をしたことはなかったから、行きなさいと言われるかと身構えたが、母は学校に連絡を入れてくれた。

私が休むことで村上先生に誤解を与えたくなかったが、そこまで気も回らず、どう伝えればいいのかもわからなくて、スマホを手にとっては置き、手にとっては…を繰り返していた。

義父がいるこの家にいるのは嫌だったが、部屋には鍵をかけて一日中寝ていた。昼食時には一度声を掛けられたが、食欲もないので断った。

枕を涙で濡らし、遥と交わした言葉や、笑顔を思い出すと、会いたい気持ちで胸が苦しかった。

いっつもふざけてばっかりだったのに…
昨日の遥は、見たことないぐらい素直で。

『好きだ』って、たくさん…
何度も言ってくれた。

私も、遥がいる街に行きたい。
どうすれば行けるのだろう…



そうして一日過ごし、夜中にメールが来た。村上先生からだった。
『具合はどう?』と体を気遣うものだった。

少し悩んだが、先生に電話をした。
拍子抜けするぐらい普段と変わらない受け答えをする先生。
私を抱いたことで葛藤もあっただろうが、それを感じさせなかった。


「先生…昨日はごめんなさい」

『俺こそ…大人げないことをした』


村上先生は、謝りたかったと言っていた。
簡単に乗るべきじゃなかったと。

私も、その場の寂しさをたやすく埋めるために先生の温かさにすがった。そんなことをしたって、何も埋まらなかったのに――。


『浅野と会ったんだろ。あいつ、今日登校したよ。手続きとかあったからね』

「来てたの…?」

『キレられたよ…碧に何してんだって。返す言葉がなかったよ』


先生は終始穏やかで。
もうふらふらするなよと言い、明日は学校に来るようにと告げられ、電話を切った。
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