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17歳の寄り道
第10章 【村上編】急転
山家さんの誘いは感動すら覚えるほど嬉しかった。

若い研究者の中で、俺が一番見栄えがいいという理由で(それは山家さんの勝手な主観で、俺はイケメンでもなんでもない)、この学園にあてがわれたのだが、いずれは研究所に戻ると思いながらこの学園で働いていた。

あれから数年経ち、教師としての喜びも確かに知ったが……昨日から自責の念に駆られながら自分の受け持ちの生徒で自慰に耽る。まともな道を踏み外してしまったような不安は消えず、教育者としてやっていく自信はもうなかった。

そもそも、俺は教師などやりたくなかったんだ。
研究所に戻れるならすぐにでも戻りたい。


『新しい人員は、またうちの若い奴を送ろうと思うんだ。どうだ?早い方がいいんだが、まずは生徒が第一だからな。学園とも話をするよ』

俺は二つ返事で快諾した。



戻れる、また研究できる。
その場にはもう詩織はいないが、心が湧き立った。

やっと戻れる――。



翌日は我ながら上機嫌で過ごした。未来に思いを馳せると後ろ暗かった感情も薄らぎ、最後の日まで、悔いのないように授業を進め、丁寧に仕事をしようと心新たにした。

見慣れた風景の職員室。辞めるとなると、もうここに来ることもなくなるんだな。
A組の連中は、卒業までみてやりたかったとも思う。
しかし、このチャンスを逃せば、研究所に戻るのもいつになるかわからない。

少し感傷に浸りながら書類を仕上げた時だった。丸い掛け時計を見てハッとする。

「あ、いけね。放課後話聞くって白川に…」

すっかり忘れていた。
放送をかけようと椅子から立ち上がったら、ちょうど白川が入室し、俺の席まで歩いてきていた。

「あ。放送かけようと思ってたら、来ましたね」
そう言うと、白川は上目遣いで俺に囁いた。

「放送かけられたら、悪いコトして呼び出されたって思われそう…」
「悪いことって何?」

いちいちこいつの発言にエロスを感じる俺も俺だが、今日は笑い飛ばせる。

「教室使いましょうか」

俺は白川をつれて、2年A組の教室まで歩いた。
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