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17歳の寄り道
第11章 【村上編】タブー
白川との出来事があった翌日から、また浅野は休むようになった。
電話をしても出ない。メールも帰って来ない。既読もつかない。
一度様子を見に家に寄りたかったが、年度初めの雑務もあり、なかなかいける時間を作れなかった。

白川とは、学校では何もなかったように話せるし、校内で見る彼女は他の生徒と何ら変わりはなかった。


昼休み、化学準備室で授業の準備をしていると、コンコンとノック音が聞こえてきた。
カラカラとほんの少しだけドアが開き、その隙間からちょこんと覗く生徒。

「村上先生。今、お時間ありますか?」

目と前髪しか見えないぐらいの隙間から俺に話しかけてくる。

1-Aの小谷美咲。天文部の女子部員だ。
化学が苦手らしく、入学して早々、よく一人で質問に来ていた。

「時間はあんまりないけど……質問ですか?」

まあ、少しだけなら……とドアを開けると、小谷は嬉しそうに教科書とノートを胸に抱え、俺に寄り添うように座った。
関係を誤解されては困るので、校内ではドアを開け放って密室にならないようにしていた。

俺が説明している間も、小谷は俺をうっとりと見つめている。
年上に憧れる時期なのだろう。女子の少ないこの学校では、恋愛に不自由はしないと思うのだが、俺につきまとう気なら、飽きるまで勝手にしろと思っていた。
ガキに興味はない。

そうだ。ガキには興味がない。
ずっとそう思っていたのに。小谷と、白川と、……俺にとって何が違うのだろう。

「よくわかりました、ありがとうございました」

小谷はふわふわの茶色の髪を揺らし、俺に礼をする。
いつもは、どうもと会釈していただけだが、その日は呼び止めて話した。

「天文部、女子入部したよ」
「そうなんですか!?何組の…」
「俺のクラスだから2年だよ。仲よくしてやって」
「はい!なかよくします!」

小谷は、向日葵のような明るい笑顔を俺に向け、戻って行った。

人の事は言えないのだが、白川は話してみると、どことなく影のある奴だ。小谷とうまくいくのかは未知数だが、意外と正反対の性格の方がしっくりくるかもしれないし、女子同士、結束は固まるだろう。

あいつの不安と寂しさが、少しでも薄れたらいい。
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