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17歳の寄り道
第15章 【千晴編】17歳、須賀千晴
帰りのバスは空いていた。
後ろから2番目の座席についた。先生が窓際で、私はその隣。
先生は大きくて幅を取るから、私は今まで当たらないように小さくなって座っていた。


でも、この日は。

少しだけ先生に近づいて座った。膝が当たったら、先生の方から避けた。腕が当たっても避けられた。今まではこっちから当たらないように気をつけていたけれど、当たると先生も避けるんだな。

「あいつらには明日よく言っておくけど、また何かされたら言いなさい」
「…はい」

私が近づいて座った事には気付いていなさそうだ。
窓に肘をつく先生を、じーっと見る。
私の視線に気づいた先生は窓の外を見ながら座り直し、イヤホンを取り出そうとした。

「待って下さい、藤田先生……」

両手で先生の手を包む。
先生は甚だ驚いた顔をして私を見た。

「あの………あの…手を繋いでもいいですか?」

乗客は前の座席に固まっていて、私たちの周りには誰もいない。
先生の太くて逞しい指を握った。左手薬指には何もついていないけど………

「隠せば、誰にも見えないし………」

何度も告白されてきたし、処女でもない。マンネリだけど、彼氏と会えばセックスだってしている。
手を繋ぐぐらい慣れてないわけじゃないのに、なぜこんなに顔が赤くなって、声が震えるんだろう。

相手が藤田先生だというだけで、こんなに胸が苦しい。

「…須賀」

――先生も顔赤い?

静かに名前を呼ばれたが、振り払われやしないかと、ぎゅっと先生の指を握り締める。
そんな私を見て、先生は溜息をつきながら、私の両手の上から大きな手を重ねてくれた。
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