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17歳の寄り道
第15章 【千晴編】17歳、須賀千晴
いつもの朝のバスでは、藤田先生とはほとんど会話を交わさないが、この帰り道は違った。
電車の中でも隣に座る。

「あいつらとは面識なかったのか」
先生は、私に質問をしてきた。いつものイヤホンはつけずに。

「なかったです。全然知りません…」
「じゃあ何で須賀が呼び出されたんだ?」
「…………さあ…」

さあとしか答えようがなく、藤田先生は不思議そうに私の顔を見た。あんまりまっすぐ見られて、恥ずかしくて先生を叩く。

「痛てえな」
「そんなに見られたら、緊張します」

胸がドキドキしてしまう。
すでに怖い目に遭って泣きそうになって、ドキドキさせられてるのに、もっとドキドキしたら間違って恋に落ちてしまいそうなほど、胸が………
恋してるみたいにざわめく。


――――恋?
こんな年上に?
それはさすがにないない。論外でしょ。
先生結婚してるし、教師だし。それに、先生好きになるほど私、出会いに困ってないし。

今日は危険な目に遭ったけど……助けてくれた時は王子様と間違いそうにカッコよかったけど。

ほら。よく見て。先生の顔。
王子様でも何でもない、フツーのアラフォー。
パパと歳変わんないから!



電車を降りてバス停まで歩く。先を歩いていた藤田先生は、エスカレーターに乗ると振り返り、泥のついた私のクラリネットケースに視線を移した。

「汚れたのか」
「あ……ホントだ…」

さっき校舎裏でこけた時だ。
大事なものなのに……中は壊れてはいないだろうが、汚れると悲しい。
手で土を払おうとしたら、藤田先生がバッグを取り上げ、汚れをはたいてくれた。そして、無言で返される。

大きな手だな。
先生は全体的に大きいんだよね。身体も手も…指も。
勝手に溢れ出る感情に戸惑いながら、返されたクラリネットケースを抱きしめる。

こんなことが嬉しいなんて、私はどうかしている……
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