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17歳の寄り道
第18章 【碧編】碧の夏休み
8月にまた観測合宿があるが、その時の顧問はもう、新任の堤先生になる。
堤先生は男性で担当は数学だが、おそらく、2-Aの担任も引き継がれるだろう。

「……村上とはなんもないの」
「ないよ。たまにプリンくれてた。高田部長と、私と、美咲ちゃんに」
「プリンで餌付けしてやがんな。高田部長懐かしー。美咲ちゃんて誰だ?」

遥もあの部室にいた事が、今となっては不思議に思う。

終業式の日、村上先生の最後の挨拶は、普段のホームルームと変わらないようなものだった。
湿っぽくなるのを避けていたのかなと今になって思ったりする。

千晴と最後の挨拶に行ったら、先生は「浅野とケンカすんなよ」と言っていた。
それが、最後の会話。


「村上先生と連絡取ってないの?」
「たまにメール来るよ。東野も」
「連絡取ってるんじゃん笑」
「碧の口から聞きたかっただけだ」

遥はそう呟き、バスに揺られ、緑の続く風景を眺める。

もう…不安にさせるようなことは、何もない。
私には、遥だけだもの。


余裕があったはずの時間だったが、乗り継ぎが悪く、新幹線のホームに着いた時はもう発車直前だった。

「……じゃあ、電話する。LINEもする。来週、待ってるから」
「うん!乗って!もう出ちゃうよ」
「………乗りたくね~!!」

と、大きな声で言うので、周りのひとがクスクス笑っていて、私も笑った。

遥も笑いながら、乗車口に乗り込む。
笑ってるんだけど……やっぱり寂しい。

新幹線は、未熟な私たちの別れなど知る由もなく、時刻通りに発車した。
ついさっきまで微笑み合って、手をつないで、すぐそこにあった温もりが断ち切られる。

――来週会いに行くのに…これで終わりではないのに。
何がこんなに悲しいんだろう。
涙ぐみながらスマホを取り出し、今日いくつか撮った動画のひとつを再生する。

砂場で遥と凛太が山を作っていて、二人が笑顔で振り向くシーン。
目に涙を溜めながらタップして、遥に送信する。

すると、すぐに返信が来た。
『もっと思い出作るぞ』と一言。
泣くな、と励まされたような気がした。


自立したい。
ここを出て、遥のそばにいるには……早く社会に出て、働くこと。
母は四年制大学を出てほしいと思っているだろうが、進学費用だってバカにならないし。

泣いている暇があったらバイトしよう…
1年半後、自由に羽ばたけるように。
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