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17歳の寄り道
第21章 【碧編】夏の幻
午後まで、凛太と一緒に村上先生の家で待つことになった。
母は最低限の仕事は済ませてから出張先を出るらしく、最短でお昼すぎに戻るそうだった。
母の稼ぎがないと暮らしていけないのは、小さな頃から認識している。それは再婚した今でも変わらないことで。
こんな事が起きても、仕事を優先させないと、生活は成り立たない。でも、すぐに帰ってこれないからと言って、私と凛太を放っているわけではない。
さっきの母の涙声は、辛くもあったけれど、母は私の事も愛してくれていると、辛い中でそう思えた。
……村上先生のお陰だ。
遥は、午前中に到着するようだった。村上先生を呼んでくれた遥にも、感謝しきれない。
私は足を怪我してしまったので、先生が寝ている凛太を抱いて2階から下りてくる。私は凛太の星柄の保育園リュックだけ持ち、ひょこひょこと歩いて車に乗った。
「凛太君、よく寝てるなあ」
村上先生は凛太の顔を覗き込みながら後部座席に寝かせ、私は助手席に乗る。
酷く疲れたが、誰かが……先生がいてくれると、フラッシュバックはなかった。
義父と最後まで至らなかったのは、不幸中の幸いだったかもしれないが、だからと言って、「よかった」などとは少しも思えない。
力では絶対にかなわない男に、好きなようにされるあの恐怖は、どうしても拭えない。
先生の家に着いたのは、明け方4時過ぎ。
空も白み始めていた。
「先生、裸足で走ったから足汚れてる…」
「そうだな、シャワー使いなさい。歩ける?」
「歩ける…」
先生は、私が片足を引きずりながらでも歩けているのを確かめると、お湯を設定してバスタオルを出してくれた。
前、ここで……
この洗面所の鏡に、生まれたままの姿で映った私と先生。
また、ここに来るなんて。
私の記憶を掻き消す様に、事務的な先生の声が聞こえてきた。
「客間に布団を用意するから、凛太君を連れてくるよ」
「ありがとう、先生」
その後も先生は私たちが過ごせるよう用意をしてくれた。
私の家の事で、先生にはここまで迷惑を掛けて本当に申し訳ない。
けれど、再び先生の家に来れた事を、心のどこかで、ほんの少し喜びながらシャワーで足の汚れを洗い落とそうとしたら。
「うっ、痛い。しみる」
傷だらけなので当然だ。
洗面器にお湯をためて、丁寧に優しく流す。
母は最低限の仕事は済ませてから出張先を出るらしく、最短でお昼すぎに戻るそうだった。
母の稼ぎがないと暮らしていけないのは、小さな頃から認識している。それは再婚した今でも変わらないことで。
こんな事が起きても、仕事を優先させないと、生活は成り立たない。でも、すぐに帰ってこれないからと言って、私と凛太を放っているわけではない。
さっきの母の涙声は、辛くもあったけれど、母は私の事も愛してくれていると、辛い中でそう思えた。
……村上先生のお陰だ。
遥は、午前中に到着するようだった。村上先生を呼んでくれた遥にも、感謝しきれない。
私は足を怪我してしまったので、先生が寝ている凛太を抱いて2階から下りてくる。私は凛太の星柄の保育園リュックだけ持ち、ひょこひょこと歩いて車に乗った。
「凛太君、よく寝てるなあ」
村上先生は凛太の顔を覗き込みながら後部座席に寝かせ、私は助手席に乗る。
酷く疲れたが、誰かが……先生がいてくれると、フラッシュバックはなかった。
義父と最後まで至らなかったのは、不幸中の幸いだったかもしれないが、だからと言って、「よかった」などとは少しも思えない。
力では絶対にかなわない男に、好きなようにされるあの恐怖は、どうしても拭えない。
先生の家に着いたのは、明け方4時過ぎ。
空も白み始めていた。
「先生、裸足で走ったから足汚れてる…」
「そうだな、シャワー使いなさい。歩ける?」
「歩ける…」
先生は、私が片足を引きずりながらでも歩けているのを確かめると、お湯を設定してバスタオルを出してくれた。
前、ここで……
この洗面所の鏡に、生まれたままの姿で映った私と先生。
また、ここに来るなんて。
私の記憶を掻き消す様に、事務的な先生の声が聞こえてきた。
「客間に布団を用意するから、凛太君を連れてくるよ」
「ありがとう、先生」
その後も先生は私たちが過ごせるよう用意をしてくれた。
私の家の事で、先生にはここまで迷惑を掛けて本当に申し訳ない。
けれど、再び先生の家に来れた事を、心のどこかで、ほんの少し喜びながらシャワーで足の汚れを洗い落とそうとしたら。
「うっ、痛い。しみる」
傷だらけなので当然だ。
洗面器にお湯をためて、丁寧に優しく流す。