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17歳の寄り道
第23章 【遥編】受診
母親の事まで。
両親の出会いはあの病院だから、知っていても不思議ではないけど。


「今は……元気です。もう、俺も母もここには住んでいませんが…」

込み入った話をしても答えづらいかと思ったが、真実を述べた。
先生は事情を知っているのか、驚きもしない。


「そうかい。じゃあ尚更運命だな。遥君が元気に過ごしてる姿を見られるなんて」






ちょうど、凛太ぐらいの頃から、小学校に上がるまで。
俺は重症の喘息発作を頻繁に起こし、入退院を繰り返していた。

幸い、小学校高学年になる頃にはもう、酷い発作は起きなくなったのだが、それまでは吸入に内服と毎日欠かすことなく続いていたし、病院にも定期的に通っていた。


「お父さんは、よく君の話をしていたよ。大きくなったね。本当に」


丸メガネの先生の懐かしげな表情を見ていたら、胸にこみ上げるものを感じた。


―――誰にも愛されていないと思っていたのは、俺の被害妄想で。

父親だって、母親だって、…この先生だって。
俺を心配し、健康を願っていてくれたじゃないか。


家庭の事には無関心だと思っていた父に、一度だけ、手を上げられた事がある。
それは…中学の頃、煙草を吸っていたのが見つかった時。

「お前は、死にたいのか!!」と平手打ちを食らい、顔を腫らし、母親が泣き叫んだ。


“何を大袈裟な、煙草吸ったぐらいで死ぬかよ。”

そう思っていたが、あれも……父さんなりの親心だったのかと、今初めて気付く。


「はるくん…」

待合に戻り、凛太が俺の膝に跨ってべたりと抱きついていた。
……確かに、丸メガネ先生の言ってたとおり、手とか赤いな。

しかし、ヨウレンキンって何だ?
初めて聞いたけど、調べてみるか…。

俺の腕の中で、うとうとする凛太をしっかりと抱き直し、背中をさすった。



俺にもこんな頃があったのだ。

点滴の管に繋がれ、柵の高い病院のベッドの中から、ひたすら母親を呼ぶ。
そして「遥、大丈夫だよ。いい子だよ」と頭を撫でられ、背中をさすられ、母親に抱きしめられて眠りにつく。

父さんも、母さんも、俺の健康を願いながら育ててくれた。

ここに来なければ、気付けなかった。
自分一人で生きてきた訳ではない事を。
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