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17歳の寄り道
第27章 【村上編】冬
しかし――

なだらかな曲線や、甘い肌の香りに欲情しながらも、心のどこかでずっと警笛は鳴り続けている。

俺が大人として、元教師としての立場を弁えていない事は置いておくとして、白川の心が見えないということが気に掛かる。

本当に、俺に気持ちがあるのだろうか。
白川も、自分の心が本当はどこにあるのか、気づいていないんじゃないか。
だが、セクシャルな興奮と恋愛感情が邪魔をする。

この弾けんばかりの体を、今からこの場で余すところなく貪るのは容易い事だろうが……

俺は、こいつの心まで手に入れられるのか?


「先生?」

目の前の可愛い女は、考え込んでいた俺を覗き込む。
俺はソファに浅く腰掛け、白川に向き合った。


何も知らないふりをして、隙のある彼女を自分のものにしてしまうか――それとも……。

少しの間逡巡し、迷いながら口を開く。

これが最後の質問だ。
この返事次第で、俺は……


「……浅野のことは、本当にもういいのか?」


まっすぐ俺を見ていた大きな瞳が、居場所をなくしたように動いた。


「あいつと向き合ったか?ちゃんと終わらせたのか?」
「………」


散々俺を惑わせてきた瞳は、悲しい黒に染まった。


……ちゃんと、わかっているじゃないか。
自分の心が、本当はどこにあるのか。


俺は脱力するようにソファにもたれ、白川に告げた。

「俺とお前は何も始まってない」

「先生……」

「……好きだよ。だから、本当に好きな奴のところへ行きなさい。何度でもぶつかってもいいんだよ。俺は……過去、もっとぶつかればよかったと思うから」

唇を震わせ、噛み締めている白川の髪を撫でる。

けなげで、弱くて、幸せに慣れていなくて、すぐふらふらして。
それでいてどこかしたたかで、ずるい女。
そういう女にばかり惹かれてしまう俺の趣味も、困ったものだ。


どれだけ寄り道しても、幸せにたどり着ければ、それでいい。


前にも言った言葉だが、何度でも言う。
お前らは何も終わってはいない。
今が全てじゃないんだよ。
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