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17歳の寄り道
第29章 【千晴編】私のこと、好きですか?
毎週火曜日の秘密の行為は、これを期に終焉を迎えた。

先生の車が見えなくなった後は、未舗装の砂利道を進む。暗がりの道に立ち、寒さに身を竦めながら空を見上げると、闇と星空の中にぽかりと青白い月が浮かんでいる。
終わった……なあ……。
この先、こんなに人を好きになることはないだろうってぐらい……それこそ、命賭けてもいいぐらい、好きで。

「あ……何だっけ。さっきの話の…………」

月灯りの下スマホを出してみた。目を突くような眩しいブルーライトを受けながら先生が言っていたフレーズを打つと、すぐに検索結果が出た。

『死んでもいいわ』――I love youの和訳


目にした瞬間、ぶっと噴き出してしまった。

「…………こんなの……知らないよ。私、バカだし……わかりにくいよ……先生」

画面の文字がぐにゃりと歪み、涙で溢れて見えなくなる。

部屋で飽きるほど泣いた後には、初めての恋を失った傷と、先生が私だけに見せてくれた気持ちが、宝石のように煌めいて胸に残った。
先生が私に本心を打ち明けることで、不毛な関係に幕が下りた。



そして――火曜日の放課後。
いつものように倉庫の点検が終わると、藤田先生はゆっくりと振り向いた。

「須賀!何ボサッとしてる!早く部活に行け」
「はぁい」
「返事を伸ばすな!」
「はいっ」

私がいひひと笑えば、先生は怪訝そうに睨みながらも頭を掻く。

きっともう、体に触れ合うことはない。
でも、一生忘れない。

次の恋愛なんて全く考えられないし、私の心にはまだまだ藤田先生がいる。今は、そのままでいいかなと思っている。
無理に忘れるようなことはしたくない。

「先生、さようならっ」

スカートをひらりとはためかせて、藤田先生より先に体育倉庫を出た。

もう、泣かない。
これから超絶いい女になって、いつか先生のことびっくりさせてやる。「きれいになったな」って言わせてやる。
その決意を胸に、私は音楽室まで走った。
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