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17歳の寄り道
第30章 【結愛編】結愛の春休み
私が、家を出てから。
相変わらず、ひとりで気ままに過ごしている。

友達はいないし、ほしいとも思わない。
土日も寮でのんびり過ごしてる。
親は「大学は出ておけ」って言っているから、受験はするつもりではいる。

でも、地元にはもう戻れないだろう。
親も、私のことをどう扱っていいかわからないみたいだし。

小林先輩とは、もう二度と会えないだろう。
あれだけみんなに心配をかけたし、いろんなことがあったから。
本当に、先輩しか見えなくて、取り憑かれたように好きだった。失ったら終わると思っていた。

環境が変わってしまえば、前の生活はまるで夢だったのかと錯覚するけれど。
昨年の春に、諦めた命はずっと忘れはしない。

先輩は「産んでいいよ」って言ってたけど……その言葉を信じるには何もかも破綻しまっていて、先輩はその後暴行事件を起こして――。

私の性的な動画を見た警察から連絡があり、一度話を聞かれたけれど、被害届は出さなかった。交際していたのは事実だし、合意の上ということで。

本当は、合意の上なんかじゃない。
エッチを撮られてるのに気付いたのは、後のことだし。
撮られてる最中は気付いてなかったし。
それでも、小林先輩を好きだったのは嘘じゃないから……本当に夢中だった。

時々、夢の中に小林先輩が出てくる。
私の全てを支配したあの先輩ではなく、中学時代に憧れてやまなかった、野球部のユニフォームを着た、あの姿で。

その夢を見た朝だけは、涙が出る。




「廣瀬呉服店……立派だなぁ…」

春休み。
遥の母親の実家が営む呉服店が、今の学校からわりと近くにあるという話をママから電話で聞いて、急行に揺られてやってきた。
駅前にある、巨大なビルの1階フロアにその呉服店はあった。

「若い娘さんが、何か御用かね」

突然後ろから話しかけられ、びっくりして振り向くと、そこには和装のおばあさんがいた。
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