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17歳の寄り道
第31章 【碧編】碧の春休み
「こんにちは。お迎えにきました」
「あっ、凛太君のお姉ちゃん!ちょっと待ってねぇ」

丸い窓がついた、レンガ造りの園舎。
入り口には『○○ほいくえん』の看板。
可愛らしいキャラクターがついているエプロンをつけたポニーテールの先生が、私の姿を見て優しく微笑んだ。今日はバイトが休みで、母の代わりに保育園まで凛太を迎えに来ている。

「りんちゃーん!さようならのごあいさつしよう」

支度を終えた凛太と先生が手を繋ぎ、「せんせっさようなら、みなさんさようなら」と笑顔でぎゅっとし、先生がまた私ににっこり微笑む。

4歳児クラスのリカ先生。凛太の担任だ。
年の頃は20代後半らしく、私にももちろん保護者にもずっと笑顔。

「お姉ちゃんもお勉強にバイトにお疲れ様だね。ここまで遠いのに偉いね」
「いえ……いつもありがとうございます」
「あ、コラーっ!りんちゃん、踵踏まないよ!」

靴のかかとを踏んだままの凛太が階段まで出ようとしていたのを、リカ先生の大きな声が制する。

「ごめんなさーい」
凛太は言われた通り靴を履き直し、手をつなぐ。
厳しいという評判もあるそうだが、凛太も私も母も、そんなリカ先生が大好きだった。

「ありがとうございました。さようなら」
「さようなら!」

群がる園児たちとも向き合いながら、リカ先生は大きく手を振ってくれた。

家族じゃないけれど、家族のように信頼の置ける存在。
保育園をはじめ、リカ先生のお陰で、凛太がすくすく育っていると言っても過言ではないほど感謝している。



……そしていつか、私も。




家につき、凛太とふたり「ただいまぁー」と玄関を開けた。
今日は、母の仕事も月に数回ある残業日だから、家の電気はついてない。

ご飯は前に比べて少し作れるようになったし、土日は母と作り置きしたりしている。遥のようにはおいしく作れないけれど、まあまあ食べられるものになっている。

「凛太、今日はハンバーグにしよ」
制服から冷凍庫から、下拵えの済んだ食材を出し温める。

この先、私が社会に出た時。
今の私たちにとっての、リカ先生のような存在になれたら。

働くお母さんたちの、一番の味方になりたい。
そういう仕事がしたい。

と、最近少しずつ思い始めている。
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