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17歳の寄り道
第32章 【結愛編】遥の誕生日
「トイレじゃないっ。遥、これ、返しておいて」

洗ってアイロンをかけた、淡いブルー地にドットが入っているハンカチ。
ぶんっと遥に差し出した。

「返す?誰に」
「碧ちゃんに。」
「……会ったの?地元で?」
「うん。バイト終わるまで張ってた。コンビニの前で小一時間」
「逆にすげーなお前……」

遥は、勝手に会ったことを怒らなかった。

でもやっぱり、碧ちゃんは好きにはなれない。
想像していたより、よっぽどたくましくしたたかだったけど。
言い返すところは言い返してくるし、それなのに私の心配したり、解散時には普通に笑ってるし、嫌味を嫌味と受け取ってなかったりするし、最後には「ありがとう」って言って、帰って行って。

「碧ちゃんにさ、これでごしごし顔拭かれたんだよ。痛かった」
「ええ…?どういう状況だよそれ」
「……肌荒れるって言ったら、『肌なんか荒れたって治る』って言ってた」

そう言うと、遥が突然爆笑した。

「……元気そうだな。安心したわ。あいつにとったらお前も凛太も一緒なんじゃね」
「どういう意味?」
「いいや。ありがとな。結愛」

遥の手がぽんぽんと私の頭を撫でる。
なんかよくわかんないけど……。遥が笑ってるなら、いいのかな……?

「結愛がそのハンカチ持っとけば?あいつのことだから返せとも言わねぇだろうよ。嫌なら処分でいんじゃね」

「遥は、碧ちゃんに会わないの?会いに行かないの?」

「んー……。いや、俺には連絡ねぇし、俺も、今はいいかな。あいつも頑張ってるんなら、邪魔になりたくねえし……つーか、他に好きな奴でもいたら立ち直れねえし……」

「?」

最後の台詞は小さすぎて聞き取れなかった。
首を傾げる私の横で、遥が立ち上がって手すりに手を掛け、ニヤリと笑う。

「俺にもやりたいことがあるんだよ」
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