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17歳の寄り道
第33章 【東野編】高校卒業、東野涼太
そして、加納ちゃんにも申し訳ないことをしたと反省した。
気持ちには応えられなかったけど、もう少し誠実な言葉を掛ければよかった。
誰もが、素直に言いたいことを言えるわけではない。

俺を含め。



そうして夏休みは終わり、後期が始まった。

1限から経済史の時間だ。
見渡しても浅野の姿はなく、中程の席に着こうとしたら、オフショルダーを着た女子が俺を見て、顔を隠した。

目力A……?
ではないか。顔が別人だ。

俺が着席すると、またそいつが俺を見て、目が合うとぱっと逸らす。

……すっぴん?

Aなのかどうか気になり、じーっと見ていると、そいつはテキストで顔を隠しながら「見ないで」と言った。

やっぱりAだと声で判明する。

「寝坊して、メイクする時間なかったの。急いで来たんだけど……見ないで。ヤバいから」

髪も違う。いつもはもうちょっと巻いたりしてるけど、今日はナチュラルだ。

俺は、一つ席を開けてAの隣に座って講義を受けた。
なんか気になって、無意識に見てしまう。

「そのほうが……ビッチに見えなくていいんじゃん?」

Aはじとりと俺を見る。

「見た目で判断しないで。あたし男の子とつきあったこともないのに。それに、ユイハだって、一生懸命広瀬君のこと好きなんだよ」

両手で頬を隠しながらも、きっぱりと言い切るA。
ユイハ…?Bのことか。
ユイハに幻滅していた俺に気付いていたのか。

何というか、固定観念が打ち砕かれ、ちょっと機嫌を損ねているAの表情を窺う。

「決めつけてごめん。えっと……ユイハちゃんもごめん。でもあいつ、本命いるよ」
「うん。広瀬君は、最初から好きな子がいるって言ってたの。でもユイハがそれでもいいって……」

はあ。なんかよくわかんねえけど、まあいいや。
AはAなりにBを心配しているのはよく伝わってきた。

しぐさが何だか可愛らしい。
……やっぱり、化粧しないほうが全然かわいいじゃん。

「顔、その方がいいんじゃない。化粧薄いの、可愛いと思うけど……」

「え……」

Aはあどけない瞳で頬を赤らめる。


「……名前、聞いてなかったね。」


自分でも単純な男だと思う。
でも、仮面を外したあどけない素顔を見ていると、もう少し彼女を知ってみたくなった。
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