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17歳の寄り道
第34章 【碧編】夢の途中
短大生の頃、幼児教育科だった私は、ピアノ実習には苦労した。
在学中はピアノ室に足繁く通い、2年生の終わり頃、バイト代で電子ピアノを買った。
小さい頃からピアノを習っていた千晴は「うちで弾きなよ!」と言ってくれて、何度かおうちにお邪魔して教えてもらったりもした。
「はーい!じゃあ、あさのおうた歌いますよー!さん、はいっ」
短大卒業してから4年間、毎朝弾いているこの曲で、園児たちが小さな手を動かしながら、思い思いに歌っている。
ここは、私立わかば幼稚園。
評判の良さで競争率は高かったけれど、めでたく採用されたのが4年前のこと。
私は幼稚園教諭として働いている。
今年度、私は年中組の担任になった。
短大卒業時に、遥が通う大学の近くに引っ越し、就職もその地域で決めていた。
わかば幼稚園は東野君の母園らしい。
とても評判のよい園で、私もベテランの先生のもと修行中だ。
新年度は普段に輪をかけて忙殺され、園児たちも落ち着かない不安定な時期でもある。
延長保育時間が過ぎ、雑務や保護者への連絡を終え、少し業務が残っているけれど、持ち帰ることにした。
いつものように暗くなった空を見上げて通用口を出た時、主任に話しかけられた。
「鈴木先生ー…じゃなくて、広瀬先生だね。まだ慣れないわぁ」
高校卒業と同時に、白川ではなく母親の姓である鈴木を使い始めた。
義父と再婚するまでの苗字に戻っただけだ。
私は物心ついた頃から小学6年生までずっと鈴木さんだった。
主任には新人時代から扱きまくられたけれど、その厳しさには愛があるので、どこまでもついて行きたくなる人だ。
「式挙げないなんてもったいないー」
「写真は撮ったんですけど……。今、彼が大変なので、それで精一杯で……」
そう言うと、主任は苦笑した。
在学中はピアノ室に足繁く通い、2年生の終わり頃、バイト代で電子ピアノを買った。
小さい頃からピアノを習っていた千晴は「うちで弾きなよ!」と言ってくれて、何度かおうちにお邪魔して教えてもらったりもした。
「はーい!じゃあ、あさのおうた歌いますよー!さん、はいっ」
短大卒業してから4年間、毎朝弾いているこの曲で、園児たちが小さな手を動かしながら、思い思いに歌っている。
ここは、私立わかば幼稚園。
評判の良さで競争率は高かったけれど、めでたく採用されたのが4年前のこと。
私は幼稚園教諭として働いている。
今年度、私は年中組の担任になった。
短大卒業時に、遥が通う大学の近くに引っ越し、就職もその地域で決めていた。
わかば幼稚園は東野君の母園らしい。
とても評判のよい園で、私もベテランの先生のもと修行中だ。
新年度は普段に輪をかけて忙殺され、園児たちも落ち着かない不安定な時期でもある。
延長保育時間が過ぎ、雑務や保護者への連絡を終え、少し業務が残っているけれど、持ち帰ることにした。
いつものように暗くなった空を見上げて通用口を出た時、主任に話しかけられた。
「鈴木先生ー…じゃなくて、広瀬先生だね。まだ慣れないわぁ」
高校卒業と同時に、白川ではなく母親の姓である鈴木を使い始めた。
義父と再婚するまでの苗字に戻っただけだ。
私は物心ついた頃から小学6年生までずっと鈴木さんだった。
主任には新人時代から扱きまくられたけれど、その厳しさには愛があるので、どこまでもついて行きたくなる人だ。
「式挙げないなんてもったいないー」
「写真は撮ったんですけど……。今、彼が大変なので、それで精一杯で……」
そう言うと、主任は苦笑した。