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17歳の寄り道
第35章 【千晴編】24歳、須賀千晴
雨が降ってきたらしく、店の窓ガラスに雨粒が打ちつけられた。
結局ビールは先生に飲んでもらわずに、私一人で飲み切った。

酔いも手伝っていい気分。

先生には、誕生日祝いということで御馳走になってしまい、会計の時に、先に外に出るように促された。

「気をつけてね、お嬢さん」

女将さんが私にも声を掛けてくれて、「ごちそうさまでした」とぺこりと礼をした。

お嬢さんて……
先生の娘だと思われてるのかな?
息子さんしかいないのは知らないのかな。

からからと引き戸をひき、のれんをくぐって外に出ると、雨は本降りになっていて、強い風で雨粒が舞っている。

続いて先生ものれんから出てきて、二人で寂れた赤い軒下から荒れている空を見上げた。

「タクシー呼ぶから、それで帰れ。俺は運転できないから」

先生は携帯を出し、タクシー会社に電話をしていた。
その姿をじっと見つめながら、いい誕生日だったなぁと今日を反芻していたら――。

――やっぱり、飲み過ぎたかも。

せっかく先生といるのに、しかもタクシーの手配してくれてるのに、立っていられない……。

先生は、そんな緊急事態の私に気付くことなく、舌打ちをして電話を切った。

「……だめだ。今、警報が出てるらしくて、どこも捕まらない」

「そうですか…」

と答えるが、……足に力が入らないし、気持ち悪い。

これは……リバースのフラグ?
先生の前でそんなことになったら終わりだぁ……!

ふらついた私は、携帯を握っている先生の腕に掴まった。


「おい、何してるんだ」

先生は私がふざけていると思ったらしく、ぐいっと押し戻す。
その反動で後ろに倒れこんで尻もちをつき、くたりと動けなくなった。

「おい……」

私のただならぬ様子に先生は身を屈めて私の顔を覗き込んできた。

「吐く……」

「だから言っただろうが!」

怒鳴られながらも抱き起こされて、先生にしな垂れかかった。
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