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17歳の寄り道
第35章 【千晴編】24歳、須賀千晴
年代を感じる椅子にテーブル。
あの、紅葉学院前の定食屋さんに近い雰囲気だ。

様子を見ていると、ここはどうやら先生のいきつけの店のようで、女将さんも慣れた様子でお通しを持ってきた。

「お嬢さんは、お飲み物どうする?」と女将さん。

「ビールにします」と答えたら「ウーロン茶でいい」と先生に遮られた。

「明日も仕事だろう。やめておけ」

……先生と一緒に飲みたかったのにな。
しゅんと落ち込むと、女将さんが「飲めなかったら飲んでもらいな」と言ってくれて、結局ビールを頼むことにした。


先生は焼酎を飲み始めて、私はその哀愁漂う姿を眺める。
8年経てば、その分先生も年齢を重ねている。
それも含めて、愛しくて仕方がない。

先生。さっき、なんでキスしたの?
発言に責任を持てってどういうこと?
私は、嘘をついたりしないよ。


運ばれてきた料理に手をつけてビールを煽る。
家庭料理風のそれらは、懐かしい母の味という優しい味わいで、いくらでも食べられる。
宴会で食べたというのに、食べ過ぎ…

「おいしいですね」

そう言うと、藤田先生は少しだけ目を細めた。



普段笑わない人の笑顔は、心に響く。
それが好きな人であれば尚更で。

8年前からずっと心の中にいる。
私の人生の3分の1を、先生が占めている。

先生は、飲んでも饒舌にはならないし、普段と変わらず、お酒は滅法強いらしい。


二人で飲みながら交わした会話と言えば、この魚はどこで獲れたものだとか、この肉の部位はどことか…(笑)

色気のない雑談でも、先生が話してくれることは何でも嬉しくて、ずっと聞いていたかった。

あまり目を合わせてくれない先生。
話していると時々視線が合うのに、すぐに外れる。

胸がきゅっと切なくなって、もっと見てほしくなる。

もっと、先生の視界の中に入りたい。
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