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17歳の寄り道
第36章 【千晴編】台風の夜
先生は私に広い背中を貸したまま、後ろを見る。
私がぎゅっと抱きついて離れないから、片手だけ後ろに寄越してぽんぽんと私の背中を叩く。

「少し休むか」と先生。

仄暗いダウンライトだけつけて、リビングにある大きなソファに二人で座った。

寝室のベッドを使いたいなら一人で使えと言われたけど、リビングのソファなら一緒にいてくれるらしい。

家にもメールを済ませ、サイレント設定にしてバッグに入れた。


先生の隣に座ったら、先生は私に目を合わさずに、話を始めた。


先生と奥さんは、私が翠学園を卒業した翌々年に離婚していた。

先生のお母さんは、その前の年に他界されていて、そこで先生と奥さんとの亀裂が決定的なものになったらしい。


「今は、見ての通りだ。実家を売った金でここを買って一人で住んでる。惇は、都内で暮らしてる」

「……先生が翠学園を辞めたのは…?」

「家内の父親が……翠学園の関係者だからだよ」


そうだったんだ。

胸がひりひりと痛み、嫉妬で息苦しい。

この夏で離婚して5年が経つそうだ。

「だから、ここに誰も帰ってくることはない。俺しか住んでないからな」

そう話す先生が寂しげに見えるのは気のせい?


「先生……私が先生のそばにいたらだめ?」

「……お前には、吉川とか倉谷君とか、同世代の男がいるだろう。何も好き好んで俺なんかといなくても」

「でも、私、どうしても先生がいいんです」

「…………発言には責任持てってさっきあれほど…」

先生は氷の溶けたグラスを飲み干して、ガラスのテーブルにコンと置いた。


「私は、嘘つきませんよ。発言に責任も持ってます。先生を裏切ったりしませんよ。誰かと……一緒にしないでください……」

言いながら涙が溢れて、先生が見えない。


「……何回好きだって言えば、私を信じてくれますか?」


少しの沈黙の後、先生の大きな体が近づき、私を強く抱いた。
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