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17歳の寄り道
第39章 【千晴編】夢のはじまり
「今日は部活だからいないよー。そろそろ帰ってくるかもしれないけど、上がっておいでよ」

『おー。じゃ、上がる』

スマホが切れて碧に返そうとしたら、碧が惺を腕の中で寝かせていた。

「碧、寝かしつけうまいね~」
「ふふ……」

ピンポンとインターホンが鳴り、出迎える。
背も高く、いい匂いをさせながらモデルのようないでたちをしている涼太にギョッとした。

「何ー!涼太、都会で揉まれて洗練されてんじゃん!」
「それ褒めてんのか…?ほらこれ。祝いの品だ」
「ギャー!ありがとう、涼太ー!」

涼太の勤める化粧品メーカーの中でもハイクラスブランドのスキンケア一式に、新色コスメたち…!

「買いに行く暇なかったから、嬉しい……!ホントに嬉しい」

感激していると、気をよくした涼太が満足げに笑った。

「今度駅前のデパートでイベントあるんだ。アーティスト呼ぶんだよ。よかったら来て。惺と」
と語る涼太は、昔のさわやかさは消えつつあるが、逞しくなったように思う。

「すごいね、東野君…!」
「デキる男ぶってるのがちょっと鼻につくけど、散歩がてら覗きに行ってやってもいいよ」
「デキる男ぶってるって、ひでえな、千晴……」

3人で話しているとあの頃に戻る。
どれだけかっこつけてても涼太は涼太だし、碧もにこにこしながら私たちの話に参加していて、変わらない。

「白川、そろそろ出ようか」
涼太の言葉にみんなで時計を確認すると、18時前。

「遥も来れたらよかったのにな」と、涼太に言われて、碧が小さく頷く。

「そうだねぇ。遥、今月に限って地域医療の研修で僻地に行ってるから……」

「私は、あの遥が白衣着て、聴診器肩に掛けてるのを想像するだけで泣けるわ……」
「ふぎゃあああ……」
「「あ」」

惺が泣いてしまい、苦笑する碧から受け取って、二人を玄関まで見送った。

「それじゃ、コーチによろしく」
「うん、デパート行くね」

「また電話もするし、遊びにくるね!」
「うん、待ってる。二人とも、同窓会楽しんでおいで!」

束の間の再会が終わり、泣いてる惺の背中をぽんぽんと叩きながらベランダに出た。

明るい空には、白く浮かび上がる月。

「さっちゃん、月がきれいだね」
「うー……」

唸られてしまったけれど……。
パパもママも、あなたを愛してるよ。

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