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17歳の寄り道
第39章 【千晴編】夢のはじまり
「あうー。」
「かっ…かわいいっ…!惺くんっ…!」

碧がうちのマンションにやってきたのは、夏休み。
電話はしていたが、会うのはちょうど1年ぶりだ。
碧は膝の上で、首の座った惺を抱っこしている。

「柔らかいなぁ……いい匂い……」
「そーなの?匂いはよくわかんないや」
「ママはそうかもしんないね~。はぁ、本当かわいい…。ほにゃほにゃだ~」

私よりもママっぽい碧。

「でも目元が完全に哲さん似なの」
「え……そうなのかな……?」

お猿から成長する惺の顔が、何かに似てるとずっと思っていたら、碧が作ってくれた緑の怪獣だった。

「ほら見て、碧がくれたやつ。これ似てるでしょ」
「た、確かに……!」

怪獣のお腹に『さとる』と書き込んで、ベビーベッドに貼り付けている。

「うわあ〜…じゃあ怪獣さんまた作ってくるね!」

乳児に直接触れるのは保育園での実習以来らしくて、碧の瞳も輝いている。
今年も担任を持っていて、遥も研修は続いているので家族計画は早くても来年だそうだ。


その時、碧のスマホが鳴り出した。

「あ、東野君だ。待ち合わせの時間には早いのに」

碧に会いたかったんじゃない?
という若干シャレにならなさそうな冗談は飲み込んだ。

今晩は、翠学園A組の同窓会がある。
私は惺を置いていく気にはなれず、欠席にした。

「もしもーし。うん。あ、千晴もいるよ?あ…代わるね!」

碧がにこにことスマホを渡してくれた。
耳元から、懐かしい声が聞こえる。

『おーい。お祝い持ってきてるんだけど〜。下に車停めてる。コーチはいないの?』

私の結婚、出産の話は碧以外には話していなくて、涼太に話したのは最近。
涼太からの、同窓会の誘いの電話の折に打ち明けたら、驚くなんてもんじゃないぐらい驚かれ、『何で言わねえんだよ…!』を連呼された。
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