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17歳の寄り道
第40章 【村上編】心月
「懐かしいっすねー!あゝ紅葉〜こうよう〜♪紅葉〜が〜く〜いん〜♪まだ歌えますよ!わははは!」
「堤……ボリューム下げろ」
「村上先生!冷たいっすよ!先輩後輩じゃないですか!」

夏。珍しい奴から連絡が来た。
懐かしの翠学園で、俺が研究所に戻ることになった年、新任だった堤だ。
こいつとは縁があるのか、中高も一緒だった。
但し、年齢は10以上離れているので在籍期間は被ってはいない。

堤とは、引継をするにあたり、研究所に戻ってからも連絡を取り合ってはいた。
あれから9年経ち、いま堤は生徒指導担当になっていた。

そんな彼とふたり、居酒屋で仲良く肩を並べて酒を酌み交わしている。
堤は新任の頃には考えられなかったほど貫禄も出てきていて、恰幅までも良くなっている。

「僕なんて……今、生徒たちに毛虫のような扱いされてね、生徒に嫌われてね!藤田先生の辛さがわかりましたよ!僕は生徒に慕われたいですよ!」

嘆く堤に多少同情しつつも、懐かしい名前に苦笑する。

「藤田さん元気なのかなぁ…」
「あ、ご存じないんですか?翠学園お辞めになったんですよ」
「え。なんでまた?」
「詳しくは明かされてませんけど、噂はいろいろありますよ~!」
「噂ならいらねーわ……」

俺は、本人の口から聞いたことしか信じないことにしている。
あの世代は噂も好きだし、今思えば職場も少し閉鎖的だ。
まぁ、研究所も思いっきり閉鎖的だが。

ビールを飲み干し、次は何を頼もうかメニューを見ていると、堤が溜息をつく。

「変わりましたよ、翠学園も。今は普通の共学校ですよ。スポーツ科は数年後には廃止だそうです。今は新校舎の建設でグラウンド一個潰されてますよ」
「へえ…なんかもう懐かしい……」
「他人事っすね!」


研究所に戻って10年目になる。
恋愛らしい恋愛もせず、あの家は売り払い、今は別の人が住んでいる。

「夏休みにね、同窓会に呼ばれたんですよ。◯年卒の特進A組、村上先輩のクラスです。覚えてます?」

ぱらぱらとメニューをめくる手を止めた。
A組の懐かしい面々が思い浮かび、俺はメニューから堤へ視線を向けた。
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