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17歳の寄り道
第40章 【村上編】心月
「みんないい顔してましたよー。大体が上京してましたけど、盆休みで戻ってきてて。あいつらの中じゃあ僕は『堤君』なんですよ。わかんないことだらけで、がむしゃらにやってたあの頃の僕のままなんですよ」

もう、堤は俺の教師歴を越えている。
そうなるまでの月日は、あっという間だった気もするし、長かったような気もする。

「いい時間を過ごせたんだな。よかったじゃん。呼ばれて」
「そうですね。思ってたより、彼らの中に僕が存在していたことが嬉しかったです」

堤の発言にふっと微笑み、煙草を取り出して火をつける。
ガラスの灰皿を引き寄せて、フィルターに口を当てた。

堤は、少しだけしんみりとした後、椅子に置いてあった彼の鞄に手を突っ込み始める。

俺は頬杖をつき、煙草をふかしながら再びメニューに目を移していると、そのメニューの上に一通の白い手紙が置かれた。

「その同窓会の帰りに、『もし村上先生に会う事があれば』と託されました」
「え、誰?」

その封筒の裏を見ると、「旧姓・白川碧」と書かれていた。

「結婚したそうですよ。相手は、僕は知らない生徒でしたけど、同級生らしいです」
「……浅野かな?」

浅野しか思いつかず、自然と笑みがこぼれる。
封筒は頑丈に糊づけされていたので、この場で開封するのは控えた。

「懐かしいな。ありがとう、堤」
「僕、村上先生に素直にお礼言われたの初めてな気がします」
「そんなことないだろう……人聞き悪いな……」

失礼な奴だが、最後は互いに労い合って「また飲もう」と解散した。

10年近く経つと、駅前の雰囲気が違う。
デパートはあるし、タワーマンションも建っている。
寂れていたロータリーは、タクシー乗り場、バス乗り場共にピカピカの電飾に変わっていた。

バスに乗って行けば、昔と変わらない風景が広がっているのだろうけれど……
とまっているタクシーに乗り込み、行き先を告げる。

「すいません。市外なんですけど、お願いします」

現在は、この街よりも都会で暮らしている。
研究所の近くで、仕事に没頭しながら。
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