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17歳の寄り道
第41章 【千晴編】秋
残暑の厳しさが抜けてきた、9月の終わりごろ。
3人で駅前のデパートに来た。

「哲さん。ちょっと化粧品売場見てきていい?今日はイベントやってるらしいから…」
「ああ。俺はここで休んでる。惺も寝てるし…」

4Fのラウンジでベビーカーで寝ている惺と先生を残し、私一人で涼太の言っていたイベント会場に向かった。


「あ、終わってる…!」

秋の新色プロモーションには間に合わず、特設カウンターにはタッチアップとサンプル希望のお客が並んでいた。
涼太は……と探したが、いない。

そのかわりに、前にリップをすすめてくれたBAのお姉さんを発見した。
相変わらずとんでもなく可愛らしく、ずっと惺と家にこもっている私には眩しいぐらい美しい。

優雅な所作でメイクを施すお姉さんの姿を見ていると、お姉さんは私の視線に気づき、にこりと微笑んで会釈をしてくれた。
育児にくたびれた私とは大違いだ……。

鏡に映る自分は、とても疲れていて、何だかみすぼらしく見えて落ち着かなかった。

少しの間待ってみたけれど、涼太の姿は見つからない。
その上、「惺が起きた」と先生からメールが来て、結局涼太には会えずじまいで売場を後にした。


ラウンジのソファで、先生が惺を抱きながら私に気付く。

「もう戻って来たのか。ゆっくりしてきてよかったのに」
「だって、そんなメールもらったら心配になるもん」

かわいげなく返事をし、ソファに座る。

「悪かったな。報告しただけだったんだが」

先生に気を使わせるような言い方をしてしまった。
気まずくて黙っていると、「何か頼んだらどうだ」と言われ、グレープフルーツジュースを頼んだ。

「哲さん、私全然今きれいじゃないよね……」
「?」
「……なんでもない」

ストローを指先でつまみ、一気に飲み干すと、「ゆっくりでいいのに」と先生が言った。

「そういうわけにもいかないもん、いつも急がなきゃいけないんだもん」

そう言うと、先生も惺も、よく似た目元でじっと私を見た。
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