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17歳の寄り道
第42章 【東野編】グロウアップ
駅前デパートでのPRイベントは滞りなく終わった。
本日お呼びしたアーティストは我が社のプレスと一緒に、一足先に本社へ戻った。
俺も一緒に東京に戻る予定だったが、ここのデパートの化粧品売場の主任は、話が長い――。

「では、またよろしくお願いします!ありがとうございました!」

腰は低く、でも上品に振舞い、深く頭を下げる。
やっと解放されたと思いながら、ブースに立ち寄った。
千晴とコーチは結局来なかったな。

閉店間際だが、まだお客様もいてほとんどのスタッフは接客中。特設の片付けは思ったより残っていた。
一人のスタッフだけが片付け作業をしていて、俺の姿を見るとぺこりと会釈をした。


「東野さん。お疲れ様です」

俺より1期先輩にあたる販売課所属の浅野結愛。
専門卒なので、年齢は俺より1つ年下だ。

容姿端麗な上にとても優秀なスタッフで、この年でもうチーフに成り上がっている。
入社時から、いずれは独立して、美容関係の仕事がしたいと臆せず公言している大物だ。

現に、社内のメイクアップ大会では優秀な成績を収めているし、10月からは本社に来て、スタッフ教育の業務に携わるらしい。

しかし、この子はなんか苦手だ……。
『浅野』という名字のせいもあるかもしれない。俺が後輩である事を差し引いても、俺の方が立場が弱い。


「チーフ、お疲れ様です。何か手伝いましょうか」

社会に出て覚えた愛想笑いをしながら尋ねると、チーフは俺を一瞥し、言った。

「私たちは、『聞く前にまず考えて動きなさい』って、マネージャーには言われましたけどね」
「……そっすね……」

売場のマネージャーはそういう厳しい人が多いし、女の世界は本当に大変なのは知っている。
でも俺、営業だし!


「『俺、営業だし』とか思ってるでしょう。」

浅野チーフは、何もかも見透かしたような冷たい瞳で俺を見る。

一瞬でバレた――。

「東野さんも上目指して行くなら、耳の痛い話もちゃんと聞いて受け入れた方がいいと思いますよ」
「……はい」

いちいち言われることに納得してしまう俺。
強い女は全くタイプじゃないのに、つい従ってしまいそうになるのは姉ちゃんのせいだ。

この会社に入って、きれいな女は嫌と言うほど見てきたし、気の強い女も腐るほどいる。

でも、この子の言葉はいちいち響くんだよな。
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