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17歳の寄り道
第43章 ラストシーン
紺色のセーラー服に、エメラルドグリーンのスカーフが鏡に映るのが見える。

娘の白く細い手がおぼつかない様子でそのスカーフを胸元で結んでいる。
私は淡いベージュのスーツを着、コサージュをつける。

「あかり、支度できた?おばあちゃんちに寄ってから高校に行くからね」

「はい。パパは来ないの?」

「俺も行くよ。この日のために前から休み取ってたんだから」

遥はそう言いながら、鏡に向かってネクタイを結んでいる。


私たちが、高校を卒業してから――もう20年以上経った。
私も遥も、あの頃のような、弾けるような溌剌さはもう見当たらない。


20歳からずっと、遥の大学がある街で暮らしていた私たち。
遥のお父さんが10数年前に開業したクリニックを継ぐために、久しぶりにこの地に戻ってくることになり、一家で越してきた。

「どうか継いでほしい」とお父さんに頭を下げられ、遥がそれを受け入れたのだ。
遥にとっては大きな決断だったと思う。

今、この界隈は、都会へのアクセスもぐんと良くなって、高く綺麗なマンションや一戸建てが建ち並び、あの頃にも増して子供は増えている。小児科の需要もあるだろう。

いろいろあったけど……今は私たち親子3人で幸せだ。

古くなった実家に着き、あかりが玄関に飛び込んだ。

「おばあちゃーん!どう?制服!」

家の庭には桜が咲いている。
玄関の前で、母が目を細めて、孫を見つめている。
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