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17歳の寄り道
第5章 【碧編】ファザー・コンプレックス

そして家族皆で食卓を囲む。
この時間の義父は、母がいるので無茶なことはしないし、私も軽口を叩けるほどリラックスしていられる時間だった。
が、その日は違った。
「碧ちゃんの彼氏はかっこいいね」
義父はにーっこり、曇りなく優しい笑顔で話し出し、食べていたものが喉に詰まりそうになった。
「え、あんた彼氏できたの?だから帰り遅かったの?」
母が怪しむように私を尋問する。
「できてないよ、そんな人いないよ」
親にこんな話をする気恥ずかしさと、恋人ではなくセフレ扱いである後ろめたさ。義父にプライベートを知られるのが気味悪く、こんな夕食の話題で持ち出されるのが堪らなく嫌だった。
何でそんな話するの、と義父を見る。
「ちょっとやんちゃな感じだったね。やっぱり女の子は父親みたいなタイプを好きになるのかな」
義父の風貌は全くやんちゃなタイプではない。
何を言ってるんだろうと思ったが、母はきまりが悪そうに黙った。
その姿を見て、義父は私の本当のお父さんのことを言っているのだと察した。
実父は、やんちゃな人だったのか…
記憶がないから何とも言えないし、実父の話をすると母が悲しむのでできなかった。
実父はいないものとして刷り込まれて過ごしてきたのに、突然義父に掘り起こされ、しかも遥に重ねられて。
義父は私の感情をおもちゃにしている。私だけではない。母の感情も――。
食欲が減退したが、無理矢理食べ終えて食器を片づけ、何もなかったような顔をして自分の部屋に戻った。
20時を過ぎている。
今頃…遥は、誰かと遊んでいるだろう。
この空虚な心を満たしてほしい。
誰でもいい…
私の心を埋めてくれる人。
スマホを手にしてLINEを開く。
遥のLINEこそ知らないが、クラスメイトは半分ぐらいは入っていて、そこには千晴や東野君の名前もある。
が、…違う。
誰でもいいと念じながらも、ある人の顔が浮かんでいた。
去年、校内イベントである係をした時、係全員に村上先生の携帯番号が伝えられたことがあった。
結局一度も電話を掛けたことはなく、教えられた時に番号を登録もしたかどうかの記憶もおぼろげだったが、一縷の望みをかけて夢中で連絡先を繰ると、先生の名前が目に飛び込んできた。
村上浩輔 090-****-****
私は、躊躇せずに通話ボタンをタップした。
この時間の義父は、母がいるので無茶なことはしないし、私も軽口を叩けるほどリラックスしていられる時間だった。
が、その日は違った。
「碧ちゃんの彼氏はかっこいいね」
義父はにーっこり、曇りなく優しい笑顔で話し出し、食べていたものが喉に詰まりそうになった。
「え、あんた彼氏できたの?だから帰り遅かったの?」
母が怪しむように私を尋問する。
「できてないよ、そんな人いないよ」
親にこんな話をする気恥ずかしさと、恋人ではなくセフレ扱いである後ろめたさ。義父にプライベートを知られるのが気味悪く、こんな夕食の話題で持ち出されるのが堪らなく嫌だった。
何でそんな話するの、と義父を見る。
「ちょっとやんちゃな感じだったね。やっぱり女の子は父親みたいなタイプを好きになるのかな」
義父の風貌は全くやんちゃなタイプではない。
何を言ってるんだろうと思ったが、母はきまりが悪そうに黙った。
その姿を見て、義父は私の本当のお父さんのことを言っているのだと察した。
実父は、やんちゃな人だったのか…
記憶がないから何とも言えないし、実父の話をすると母が悲しむのでできなかった。
実父はいないものとして刷り込まれて過ごしてきたのに、突然義父に掘り起こされ、しかも遥に重ねられて。
義父は私の感情をおもちゃにしている。私だけではない。母の感情も――。
食欲が減退したが、無理矢理食べ終えて食器を片づけ、何もなかったような顔をして自分の部屋に戻った。
20時を過ぎている。
今頃…遥は、誰かと遊んでいるだろう。
この空虚な心を満たしてほしい。
誰でもいい…
私の心を埋めてくれる人。
スマホを手にしてLINEを開く。
遥のLINEこそ知らないが、クラスメイトは半分ぐらいは入っていて、そこには千晴や東野君の名前もある。
が、…違う。
誰でもいいと念じながらも、ある人の顔が浮かんでいた。
去年、校内イベントである係をした時、係全員に村上先生の携帯番号が伝えられたことがあった。
結局一度も電話を掛けたことはなく、教えられた時に番号を登録もしたかどうかの記憶もおぼろげだったが、一縷の望みをかけて夢中で連絡先を繰ると、先生の名前が目に飛び込んできた。
村上浩輔 090-****-****
私は、躊躇せずに通話ボタンをタップした。

