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17歳の寄り道
第5章 【碧編】ファザー・コンプレックス

誰か、優しくして。大丈夫だって言って。
気にし過ぎだよ、考え過ぎだよって、抱きしめて。
コール音が3回鳴り、無音になった。
その静寂を打ち消す様に呼びかける。
「もしもし、もしもし、村上先生…」
『はい……白川か?どうしたんだ?』
「せ…先生っ、今どこ…?」
『家に帰る途中だけど―…何かあったのか?』
何もないと言えば、ないのだろう。
義父の発言など、私の気にし過ぎなのだろう。
けれど今、心がすごく疲れて、氷のように冷たくなっている。
遥に満たしてもらっても、私だけを見ているわけじゃない。
その遥は、今どこで何をしているかわからない。
「先生…っ…先生…」
頬には涙が伝い落ち、先生の名を呼ぶだけの私を、電話越しに落ち着かせる先生。
『ちょっと、落ち着いて…』
遥に限らず、村上先生だって私を愛しているわけじゃない。
ただ、寂しくて、一人ではいられない。
「先生………会いに来て………」
子供のように泣く私に、村上先生は押し黙る。
『行ってやりたいけど……問題だろ、いろいろと…』
一般論で返されて、我に返った私は赤面した。
「そう…だよね………ごめんなさい……」
悲劇のヒロインになっていたのが恥ずかしくて、スマホを持つ手が震える。
『白川?』
「あ、いいの…今から、洗濯物干さないといけないし、……ごめんね、先生…。会いに来てなんて嘘だから……何も、ないから」
何もなかったかのように取り繕おうとしたら、村上先生は『夜干すの?』と言った。
母が働いているからか、晴れていれば夜干して朝取り込むのが我が家の通常だったのだ。
「うん、庭で…」
『家、出れるなら寄りますよ。ちょっとだけだけど』
予想外の事に、胸が熱くときめく。
「ちょっとでいい、ありがとう、先生…」
村上先生は、時間を指定してくれた。
唐突で非常識で、自己中な生徒の願いを聞いてくれた。
私は晴れやかな気持ちで洗濯物をかごにいれて、暗くなった庭に出た。
家族には村上先生が来ることも、何も言わない。いつものように洗濯物を干しているだけだから、誰も気にしていない。
猛スピードで干し終えて、サンダルのまま道路まで出たら、先生の車らしきライトに照らされる。
眩しい…
やっぱり村上先生の車だった。
気にし過ぎだよ、考え過ぎだよって、抱きしめて。
コール音が3回鳴り、無音になった。
その静寂を打ち消す様に呼びかける。
「もしもし、もしもし、村上先生…」
『はい……白川か?どうしたんだ?』
「せ…先生っ、今どこ…?」
『家に帰る途中だけど―…何かあったのか?』
何もないと言えば、ないのだろう。
義父の発言など、私の気にし過ぎなのだろう。
けれど今、心がすごく疲れて、氷のように冷たくなっている。
遥に満たしてもらっても、私だけを見ているわけじゃない。
その遥は、今どこで何をしているかわからない。
「先生…っ…先生…」
頬には涙が伝い落ち、先生の名を呼ぶだけの私を、電話越しに落ち着かせる先生。
『ちょっと、落ち着いて…』
遥に限らず、村上先生だって私を愛しているわけじゃない。
ただ、寂しくて、一人ではいられない。
「先生………会いに来て………」
子供のように泣く私に、村上先生は押し黙る。
『行ってやりたいけど……問題だろ、いろいろと…』
一般論で返されて、我に返った私は赤面した。
「そう…だよね………ごめんなさい……」
悲劇のヒロインになっていたのが恥ずかしくて、スマホを持つ手が震える。
『白川?』
「あ、いいの…今から、洗濯物干さないといけないし、……ごめんね、先生…。会いに来てなんて嘘だから……何も、ないから」
何もなかったかのように取り繕おうとしたら、村上先生は『夜干すの?』と言った。
母が働いているからか、晴れていれば夜干して朝取り込むのが我が家の通常だったのだ。
「うん、庭で…」
『家、出れるなら寄りますよ。ちょっとだけだけど』
予想外の事に、胸が熱くときめく。
「ちょっとでいい、ありがとう、先生…」
村上先生は、時間を指定してくれた。
唐突で非常識で、自己中な生徒の願いを聞いてくれた。
私は晴れやかな気持ちで洗濯物をかごにいれて、暗くなった庭に出た。
家族には村上先生が来ることも、何も言わない。いつものように洗濯物を干しているだけだから、誰も気にしていない。
猛スピードで干し終えて、サンダルのまま道路まで出たら、先生の車らしきライトに照らされる。
眩しい…
やっぱり村上先生の車だった。

