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17歳の寄り道
第5章 【碧編】ファザー・コンプレックス
「先生…昨日はありがとう…」
一番伝えたかった礼を述べた。村上先生は、頬杖をついていたが、目線をこちらにやると、口元を上げた。
「あれでよかったのかなと、帰り道考え込んだけどね」
「?」
「俺の対応は、合ってたのかなって」
それは…どういう意味?
まっすぐに先生を見つめ、次の台詞を待っていると、先生は頬杖をつくのをやめた。
先生が言わんとしていることは、少しわかる。
もっと、緊急性のあることで救いを求めていたとしたら、と心配していたのだろう。
たとえば、義父から、何かされたり…
考えるのも気持ち悪くて、思考を止めた。
「…合ってたと思うよ。寂しくなって電話しただけだから…」
そして、私は村上先生に義父への不満をこぼす。
それは母への不満の表れでもある。
村上先生は静かに頷きながら、たまに少し質問をしたり、義父の発言に眉を顰めたり、私の心の溜飲を下げてくれた。
「私ばっかり話してるね。きいてくれてありがとう、先生」
きっと、父に甘える気持ちもあった。先生を父に重ねて。
でも、先生と私は家族ではない。本物の父だとは思っていない。
現に私はそこにある先生の手を握りたいと思っている。不純な想いで。
先生は、私の思惑に気付かないふりをしているのか、本当に気付いていないのか…唐突に話を切り出した。
「じゃあ、ひとつだけ俺も話そうかな」
先生の話?
興味津津で耳を傾けた。
秘密だよと念を押され、勢いよく何度も頷いた。
「俺、研究機関で働いてたんだけどね」
先生は、長い指を組み、秘密を話し始める。
勤めていた研究機関。上の人がこの高校関係の人物らしく、化学で欠員が出たので行ってくれないかと頼まれて、常勤講師として採用されたのが数年前。
何年かで研究室に戻ると思っていたのに、担任まで持たされて今に至っていたが、夏に戻れるかもしれない。
そういう内容だった。
一番伝えたかった礼を述べた。村上先生は、頬杖をついていたが、目線をこちらにやると、口元を上げた。
「あれでよかったのかなと、帰り道考え込んだけどね」
「?」
「俺の対応は、合ってたのかなって」
それは…どういう意味?
まっすぐに先生を見つめ、次の台詞を待っていると、先生は頬杖をつくのをやめた。
先生が言わんとしていることは、少しわかる。
もっと、緊急性のあることで救いを求めていたとしたら、と心配していたのだろう。
たとえば、義父から、何かされたり…
考えるのも気持ち悪くて、思考を止めた。
「…合ってたと思うよ。寂しくなって電話しただけだから…」
そして、私は村上先生に義父への不満をこぼす。
それは母への不満の表れでもある。
村上先生は静かに頷きながら、たまに少し質問をしたり、義父の発言に眉を顰めたり、私の心の溜飲を下げてくれた。
「私ばっかり話してるね。きいてくれてありがとう、先生」
きっと、父に甘える気持ちもあった。先生を父に重ねて。
でも、先生と私は家族ではない。本物の父だとは思っていない。
現に私はそこにある先生の手を握りたいと思っている。不純な想いで。
先生は、私の思惑に気付かないふりをしているのか、本当に気付いていないのか…唐突に話を切り出した。
「じゃあ、ひとつだけ俺も話そうかな」
先生の話?
興味津津で耳を傾けた。
秘密だよと念を押され、勢いよく何度も頷いた。
「俺、研究機関で働いてたんだけどね」
先生は、長い指を組み、秘密を話し始める。
勤めていた研究機関。上の人がこの高校関係の人物らしく、化学で欠員が出たので行ってくれないかと頼まれて、常勤講師として採用されたのが数年前。
何年かで研究室に戻ると思っていたのに、担任まで持たされて今に至っていたが、夏に戻れるかもしれない。
そういう内容だった。