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同棲中の彼とのセックスレスを解消したい!
第4章 秋雨
ため息をつきかけたとき、はじめがブランケットを持って戻ってきた。
ウールの柔らかなチャコールグレーのブランケット。去年の晩秋頃に買ったものだった。
「もうちょっと寒くなったら、こたつの用意もしようか」
「そうね、こたつ布団を干しておかないとね」
カップを置いて、ブランケットを受け取る。
まるで毎日ブラッシングしてもらっている猫の毛のよう。なめからでしなやかな肌触り。
あたたかくてやわらかいものは、ひとを幸福な気持ちにさせるといつも思う。急に涙の気配を感じ、ぐっと喉の奥をしめるようにして堪えた。
時間は待ってはくれない。
降り続く雨を弱めたり強めたりすることだってできない。
焦っても仕方ないんだ。──そう、こころの中で言い聞かせながら、わたしはブランケットを羽織った。
***
「れみ、なんだか最近元気ない? これ、お土産」
ことりとデスクの上に手のひらサイズの四角い缶を置きながら、ナナが言った。ナナはわたしと同期入社で、プライベートでもやり取りのある同僚。
「ありがとう。紅茶? 嬉しい。──元気ないように見える?」
穏やかな顔をしてウクレレを弾く褐色の肌の女性と、赤い花が描かれた緑色の缶。相変わらずナナはお土産を選ぶセンスがいいと思った。
ウールの柔らかなチャコールグレーのブランケット。去年の晩秋頃に買ったものだった。
「もうちょっと寒くなったら、こたつの用意もしようか」
「そうね、こたつ布団を干しておかないとね」
カップを置いて、ブランケットを受け取る。
まるで毎日ブラッシングしてもらっている猫の毛のよう。なめからでしなやかな肌触り。
あたたかくてやわらかいものは、ひとを幸福な気持ちにさせるといつも思う。急に涙の気配を感じ、ぐっと喉の奥をしめるようにして堪えた。
時間は待ってはくれない。
降り続く雨を弱めたり強めたりすることだってできない。
焦っても仕方ないんだ。──そう、こころの中で言い聞かせながら、わたしはブランケットを羽織った。
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「れみ、なんだか最近元気ない? これ、お土産」
ことりとデスクの上に手のひらサイズの四角い缶を置きながら、ナナが言った。ナナはわたしと同期入社で、プライベートでもやり取りのある同僚。
「ありがとう。紅茶? 嬉しい。──元気ないように見える?」
穏やかな顔をしてウクレレを弾く褐色の肌の女性と、赤い花が描かれた緑色の缶。相変わらずナナはお土産を選ぶセンスがいいと思った。