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第4章 秋雨

　きっと彼だって……そう。わたしの存在が彼の人生の中に深く入り込んで、ちょっとやそっとじゃ引き抜けないようになっているはず。

　その考えはわたしを幸福な気持ちにさせた。




　パンをトースターから出して、オレンジのギンガムチェックのナプキンをのせたお皿の上に適当に並べていく。
　コーヒーを淹れ、ソファーに掛けてテレビをつけた。

　その映画は数年前に上映されていたもので、飛行機の中で隣同士になった三人の女性のお話。みんな知らないもの同士。偶然、隣に座っただけの三人だった。

　ひとりは夫の不倫に気付きながら何もできず、ひとりで抱え込んでいる女性。二十八歳、この飛行機には法事に出席するために乗っている。夫は来ない。彼は今、スイスに出張中だ。
　ふたりめは一週間前に彼氏と別れたばかりの女性。二十六歳、一人旅のために飛行機に乗っている。
　そしてもうひとりは、ひとりめの女性の夫の不倫相手。ひとりめの女性に、男と別れてもらうため話をしについてきた。二十三歳。
　それぞれ左からその順番に座っている。

　彼女たちそれぞれの目線、回想シーンを挟みながら物語は進んでいく。

　わたしはパンをかじり、コーヒーを飲みながらテレビ画面の向こうの世界を、まるで他人の生活を覗き見ているような気持ちになりながら眺めていた。