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第4章 秋雨

「残念なことですが他の女性に気持ちが移ったのでしたら、あなたときちんとお別れをしてから付き合うべきだと思うんです。不誠実な男とは別れて正解ですよ」

　そう言った女性の目が悲しそうな色をしている。彼女もまた、不誠実な男と生活を共にしている……。

「でも、人間ってそんなに立派なものじゃないから、誰かに頼りたいときに優しくされたら……。例え相手が既婚者であっても、または自分が既婚者だったとしても、その相手と出会ってしまったことはもう消せないですよね。自分に相手がいることを黙っているひとだっていますし」

　不倫相手の女性が言う。ゆるくウェーブのかかった髪をいじりながら。
　身勝手で意地悪な意見だ。でも、確かに『人間ってそんなに立派なものじゃない』というのはよくわかる。

「交際相手がいるのに、それを黙っていて他の女性に近づいたってことですよね。そんな男のひともいるんですよね……。わたしの元カレの場合はどうだったんだろう……そこまで聞いていませんでした。でも、もうどうでもいいことですね。もう別れたんだし」

　コーヒーがするりと喉を流れて落ちていく。
　女性たちの会話がさらさらと交わされていき、それぞれの表情がどんどんと変わっていった。