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第6章 飛翔

「そうだ。古くなったパンスト、破ってもいい？」

「冷蔵庫の下を掃除するのに使おうと思ってたんだけど、まぁいいか。いいよ」

「やった！　ちょっとフォーマルな感じのワンピースを着てよ。俺、れみの上司っていう設定でさぁ」

　手を取り合って寝室へと向かう。
　彼のリクエストに応えることで、わたしはまたひとつ自信を手に入れる。
　彼を喜ばせることができ、そしてまた自分も悦びを身体中で感じることができる。
　彼のリクエストはわたしたちのひと時の甘いエッセンス。

　まだあの夢のように可愛いお洋服とチョーカーは丁寧にしまわれている。でも、それらもまた近いうちに出して身に着けられたらいいなと思っている。
　あの日の失敗も、感じたことも、今なら彼に『思い出話』のように話すことができそうだった。わたしたちが悩み、苦しみ、たたかった日々のこと……。

　そういえば、夫が不倫をしている女性とその不倫相手の女性、そして傷心旅行中の女性の出てくる映画を実はまだ最後まで見ていない。
　あの映画も、今ならきっと違った気持ちで最後まで見られるような気がした。　
　はじめが仕事で遅いときにでも、最後まで見てしまおうと思った。こたつに入って。