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恋はいつでも平行線【完結】
第29章 *二十九*
 ぎりぎりと首を絞められた。
 抵抗するために暴れたけれど、手と足と縛られているため、思うように動けない。

「かっ……はっ」

 頭に血が上り、空気を求めるために口を開けても入ってこず、だんだんと目の前が暗くなり、意識がもうろうとしてきた。
 わたし、このまま、訳の分からないまま、死んでしまうの?

「あ……お」

 助けを求めて、青の名を呼んだけれど、なんの答えもない。
 身体の力が入らなくなり、目を開けているのも億劫になってきて、目を閉じた。

「し……ん、や……」

 臣哉は、わたしを殺したいほど憎んでいたんだ。

 その事実に悲しくなり、ぽろりと涙がこぼれた。

 臣哉、嫌いって言って、ごめん。
 でも──。

 少しだけ気合いを入れて、目を開けた。
 臣哉の顔が、ぼんやりと見えた。

 相変わらずの垂れ目なのに、眼光が鋭いから近寄りがたく感じるけれど、それでも、見た目はいい男だと思う。
 左目の目尻にあるほくろが妙にセクシーで、ちょっとだけどきどきする。 

 臣哉の顔、少しだけ──好き、だった。

 これで性格がよければ、好きになれたのかもしれない。
 でも、そうなったらきっと、臣哉は臣哉ではなくなってしまう。

「臣哉……の、馬鹿。……やっぱ、り、嫌……い」

 首を絞められて、空気が足らなくなり、わたし、このまま、死ぬんだ。

「────…………」

 なにか言おうとしたけれど、意識が薄れて、無理だった。
 そして、わたしはそのまま、意識の底に、沈んでいった。
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