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恋はいつでも平行線【完結】
第29章 *二十九*
容赦ない力で左手首を掴まれて、さらには、ぎりぎりと骨にヒビが入りそうなくらいの力を加えてきた。
「臣哉っ、痛い……!」
「……で? 憎まれ口はそれだけか?」
「……え」
冷ややかな視線に唖然として、涙の濡れた顔のまま臣哉を見た。
「なんだ、オレ、三つしか欠点がないんだ」
「は……?」
「おまえなんて、偉そうだし、お高く止まってるし、オレのこと馬鹿にしてるような表情で見てくるし、ぜんっぜんかわいくないし、性格もきっついし、口も悪いし、上げたらキリがないくらい、欠点だらけだよな」
最初の三つは誤解だと思うけど、後の三つは反論しようがない。
「それなのに……っ!」
臣哉はようやく表情を崩して、唇を噛みしめながら、わたしの手首にさらに力を入れた。
「────ったく! そういう、迷子みたいな顔、するなよ……っ!」
「ちょっと、臣哉! 手首、痛いっ!」
迷子みたいな顔ってのがどんなものなのか分からないけれど、手首は痛いし、臣哉の態度に戸惑ったのは確かだ。
痛いと訴えても、臣哉は手首から力を抜いてくれない。あまりの痛さに、涙が出そうだ。
「もっとオレのこと、憎めよ! オレのこと、嫌えよ!」
「……な、に、……言ってる、の?」
思いがけない言葉に、手首の痛みを忘れて、呆然とそう聞いた途端。
『……やらぬ』
「……え?」
臣哉の口から、掠れた女の声が聞こえてきて、なにが起こったのか分からずにいると、表情さえ変わった。
『ようやく、見つけた。ワタシだけの、精液……!』
その一言に、ぞーっと背筋が凍った。
夢の中で一度だけ会った(?)、あの赤いドレスの女性……!
『ワタシから逃げられるとでも思っていたのか?』
「あなた……だ、れ?」
『だれだろうと、ワタシからこれを奪うおまえなど、要らぬ』
臣哉のはずなのに、見たことのない邪気に満ちた歪んだ顔をわたしに向けてきたと思ったら、手首にあった手をわたしの首に回してきた。
『死ね』
「やっ……!」
「臣哉っ、痛い……!」
「……で? 憎まれ口はそれだけか?」
「……え」
冷ややかな視線に唖然として、涙の濡れた顔のまま臣哉を見た。
「なんだ、オレ、三つしか欠点がないんだ」
「は……?」
「おまえなんて、偉そうだし、お高く止まってるし、オレのこと馬鹿にしてるような表情で見てくるし、ぜんっぜんかわいくないし、性格もきっついし、口も悪いし、上げたらキリがないくらい、欠点だらけだよな」
最初の三つは誤解だと思うけど、後の三つは反論しようがない。
「それなのに……っ!」
臣哉はようやく表情を崩して、唇を噛みしめながら、わたしの手首にさらに力を入れた。
「────ったく! そういう、迷子みたいな顔、するなよ……っ!」
「ちょっと、臣哉! 手首、痛いっ!」
迷子みたいな顔ってのがどんなものなのか分からないけれど、手首は痛いし、臣哉の態度に戸惑ったのは確かだ。
痛いと訴えても、臣哉は手首から力を抜いてくれない。あまりの痛さに、涙が出そうだ。
「もっとオレのこと、憎めよ! オレのこと、嫌えよ!」
「……な、に、……言ってる、の?」
思いがけない言葉に、手首の痛みを忘れて、呆然とそう聞いた途端。
『……やらぬ』
「……え?」
臣哉の口から、掠れた女の声が聞こえてきて、なにが起こったのか分からずにいると、表情さえ変わった。
『ようやく、見つけた。ワタシだけの、精液……!』
その一言に、ぞーっと背筋が凍った。
夢の中で一度だけ会った(?)、あの赤いドレスの女性……!
『ワタシから逃げられるとでも思っていたのか?』
「あなた……だ、れ?」
『だれだろうと、ワタシからこれを奪うおまえなど、要らぬ』
臣哉のはずなのに、見たことのない邪気に満ちた歪んだ顔をわたしに向けてきたと思ったら、手首にあった手をわたしの首に回してきた。
『死ね』
「やっ……!」