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恋はいつでも平行線【完結】
第30章 *三十*
 ふと気がつくと、唇に柔らかな感触。
 そして、ふーっと息を吹き込まれ、次の瞬間、喉の奥が開いた感覚がして、どくんと心臓が動き──。

「げふっ、げふっ」
「柚希っ?」

 ちょっと、なにっ!
 むちゃくちゃ息が苦しいんだけど!

 大きく息をして、それからひどく苦しい息を治めるために、身体を丸め、盛大に咳こんだ。

「げふげふげふっ」
「雪、柚希の意識が戻った!」

 この声は……青?
 いやそれより、意識が戻ったって、どういうこと?

 なんかよく分からないけれど、あちこち痛いし、息は上手くできないし、頭はぼんやりするし、なにが起こっているの?

「柚希、大丈夫? 俺がわかる?」
「げふげふっ……青……?」
「うん、そうだよ! よかったぁ」

 青はそう言って、わたしの身体を労りながら、抱きついてきた。

 なんかよく分からないけど、わたしの身になにか起こっていた、ということだけはわかった。
 しばらくして、廊下が騒がしくなったと思ったら、ぴしゃっという音がして、ふすまが開いた。
 そちらに視線を向けると、泣きそうな表情をした雪さんが立っていた。

「柚希さま!」

 そう言うなり、雪さんらしくなく部屋に駆け込んできて、わたしを抱きしめていた青をぽいっと放り投げ、抱きついてきた。
 冷水のように冷たかった雪さんとは違って、今は暖かい。

「雪……さ、ん?」
「柚希さま、よかった……!」
「…………?」

 雪さんはわたしを確かめるようにぎゅーっと痛いくらい抱きしめてきた。

「ゆ、雪さん、苦しい」

 そう言えば、雪さんはあわてて離れてくれた。

「すみません、柚希さま」
「もー、雪。嬉しいのはわかるけど、俺を投げ飛ばすなんて、ひどすぎない?」

 ほんと、いったい、なにが……?

 ようやく落ち着いた雪さんと青が、わたしに教えてくれたのは、驚きの事実だった。

 なんと、秋祭りから一ヶ月も経っているというのだ。

「え……?」

 わたし、一ヶ月もの間、なにしてたのですか?

「あの日の夜中の出来事は?」
「……覚えてる」

 目が覚めたら夜で、青い満月の下、なぜか青と臣哉が対峙してた。

「あの……黒い影は」
「呪いの骨董たちの集合体」
「は?」
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