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恋はいつでも平行線【完結】
第32章 *三十二*
それは、雪さんと青から聞いたとおりだった。
「痕跡の欠片さえなくて、さすがにおかしいと思いまして、捜索範囲を広げたのですが、やはり見つからず。……それで、先ほど、ふとこの辺りを探していないことを思い出して、探したところ……」
見つかったのです、と雪さんは呟いた。
「見つかったのは……それが神域近くでして」
「……え」
神域、というのは、神田家の奥院にある、井戸の源泉がある場所のことを指す。
そこは、当主しか入れない場所で、先日、新年の禊ぎと称して母が行ったばかりの場所だった。
まさかそんな近くにいるとは思わず、身体が震えた。
「おばあさまに……」
「先ほど、報告にあがりましたが」
その声に呼応するように、ふすまが開き、祖母が立っていた。
「おばあさま、あの」
「ならぬ」
「……え」
「近寄ることは、ならぬ」
「でも! あそこに人が!」
「それでも、ならぬ」
「……そんな!」
あの場所がどれだけ重要なところか、知らないわけではない。
だけどあそこに、臣哉がいる。
行方をくらませてかなり経つけれど、雪さんは臣哉が死んでいるとは言わなかった。
ということは、生きているのだ。
「あそこがどれだけ大切な場所か、おまえは知っているはずだ」
「でも! あそこに、生きてる人がっ!」
「ならぬ。一人の命を救うために、おまえは、このあたり一帯のものの生活を壊すというのか」
「────っ!」
「水は、我らの命。それだけではない。この地区みなの、生活の糧」
いきなり突きつけられた難題に、わたしは唇をかみしめた。
「もう何ヶ月経っておる。見つけたとしても、死んでおろう」
祖母の冷たい一言に、わたしは返す言葉もなかった。
「痕跡の欠片さえなくて、さすがにおかしいと思いまして、捜索範囲を広げたのですが、やはり見つからず。……それで、先ほど、ふとこの辺りを探していないことを思い出して、探したところ……」
見つかったのです、と雪さんは呟いた。
「見つかったのは……それが神域近くでして」
「……え」
神域、というのは、神田家の奥院にある、井戸の源泉がある場所のことを指す。
そこは、当主しか入れない場所で、先日、新年の禊ぎと称して母が行ったばかりの場所だった。
まさかそんな近くにいるとは思わず、身体が震えた。
「おばあさまに……」
「先ほど、報告にあがりましたが」
その声に呼応するように、ふすまが開き、祖母が立っていた。
「おばあさま、あの」
「ならぬ」
「……え」
「近寄ることは、ならぬ」
「でも! あそこに人が!」
「それでも、ならぬ」
「……そんな!」
あの場所がどれだけ重要なところか、知らないわけではない。
だけどあそこに、臣哉がいる。
行方をくらませてかなり経つけれど、雪さんは臣哉が死んでいるとは言わなかった。
ということは、生きているのだ。
「あそこがどれだけ大切な場所か、おまえは知っているはずだ」
「でも! あそこに、生きてる人がっ!」
「ならぬ。一人の命を救うために、おまえは、このあたり一帯のものの生活を壊すというのか」
「────っ!」
「水は、我らの命。それだけではない。この地区みなの、生活の糧」
いきなり突きつけられた難題に、わたしは唇をかみしめた。
「もう何ヶ月経っておる。見つけたとしても、死んでおろう」
祖母の冷たい一言に、わたしは返す言葉もなかった。