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恋はいつでも平行線【完結】
第35章 *三十五*
 祖母にほぼ追い出されるような形で、神田の本家を辞した。

 青は、一足先に戻って、臣哉の様子を見に行くとのことだった。
 青に臣哉のことを頼んでいいのかどうか分からないけれど、たぶん大丈夫だろう。

 ぼんやりとバスを待ち、乗り込む。
 乗客はわたし一人だけ。
 山の合間をのろのろと走るバスの中から見慣れた山々を見ながら、母と姉とまったく話さなかったことに気がついた。
 秋祭りの時期だったから、仕方がないけれど、そもそもわたし、どうして実家に戻った?

 ────…………。

 臣哉に初めてを奪われて、それを知った伯父さんが、わたしの同意もなく勝手に臣哉と結婚することを決めた。
 それだけでも嫌だったのに、その臣哉はなにかに取り憑かれたかのように(実際、取り憑かれていた……?)、わたしを抱き殺す勢いだったから、それを怖れて実家に逃げた。

 逃げた実家で、青と知り合い、こちらはこちらで絶倫だし……。
 どちらに転んでも、わたしは抱き殺される運命にあるようだ。

 って、あれ?
 何一つ解決していないどころか、ひどくなっているよね?
 なんだかすっきりしてるから終わったように思ったけれど、なにも終わってないじゃない。
 これでわたし、戻っていいの?

「お客さーん、駅に着いたよ」

 運転士さんに声を掛けられて、とっくに駅に着いていたことに気がついて、お礼を言い、慌てて降りた。
 珍しく電車の連結が良くて、すぐに乗りこめたんだけど、このまま乗って帰っていいの?

 悩みつつも、とりあえず帰る場所はあそこしかないので、一度、戻ってから考えることにした。

 在来線に揺られ、新幹線に乗り換えて、さらには地下鉄に乗り換えて数時間。
 数か月ぶりの最寄り駅を見て、ホッとした。

 やっぱりここは、わたしが帰ってくる場所であるようだ。
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