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恋はいつでも平行線【完結】
第35章 *三十五*
 そういえば家の鍵は伯父さんに預けていたので、リンティに寄らなければと思ったら、改札の向こう側で青が待っていてくれた。

「柚希、おかえり」
「青! ただいま!」

 改札を出たところで、青がわたしをぎゅっと抱きしめてくれた。
 人通りがそこそこあるので、視線が痛い。
 それでも、青の温もりが嬉しくて、抱きしめ返すと、青が嬉しそうに笑った。

「家の鍵、預かってきた」
「え……伯父さんに会ったの?」
「いや、あいつから取ってきた」

 えー、臣哉のヤツ、まだマスターキー持ってたんだ。

「そういえば、臣哉ってどこに入院してるの?」
「いや、もう退院してる」
「え、そうなの?」

 臣哉がどれだけ行方不明だったのか分からないけれど、かなり衰弱していたのではないだろうか。
 てっきり一週間くらいは入院していると思ったのだけど、大丈夫なんだろうか。

「あいつ、殺しても死なないよ」
「あははは……」

 そういいながら、青と手を繋いで数か月ぶりに部屋に戻り、鍵を開けたところで……。
 見覚えのある手が伸びてきて、強く引き寄せられた。
 ぎゅっと抱きしめられ、その体温ですぐにだれか分かってしまった。

「────っ!」
「おかえり、柚希」

 目の前には、二重の垂れ目なのに、眼光が鋭く、左目尻にほくろがある臣哉が、色気たっぷりな笑みを浮かべてわたしを抱きしめていた。
 まさか臣哉がここにいるとは思わなくて、これは逃げた方がいいのかと思ったら、ぱたん……と戸が閉まった音がした。
 慌てて後ろを見たら、困った顔をした青がいた。

「え……なんで」
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