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恋はいつでも平行線【完結】
第1章 *一*
 わたし、神田柚希(かんだ ゆずき)の一日は、人に言えないとある儀式──うん、立派な儀式だよね!──から始まる。

「ん……っ」

 目が覚めると同時に、わたしの手は無意識のうちにちょっと大きめなのがコンプレックスな胸へと伸び、祖母から譲り受けた白い浴衣の上からゆっくりとこね始める。

 次第に意識がはっきりしてくると、掛け布団の中でうつぶせになり、ゆっくりと身体を起こした後、寝る前に枕元に準備しておいた白いお皿を手に取り、太股に挟む──。

 朝、起きてすぐの、ネジがまだちょっとゆるーいときだからこそできる儀式であるけれど、我に返る瞬間はいつも辛い。

 こんなこと、しなくていいようになればいいのに……と思いつつ、結局、気持ちがいいからという理由だけで、続いている。

 わたしが起きてすぐに行っている『儀式』とは、ですね。

 えと……その。

「ん……はぁ」

 気持ち良すぎて、思わず声が洩れてしまった。

 慌てて唇を噛みしめたけれど、今現在、この建物の中には生きている人間はわたし一人だけだから、多少の声を出しても問題ない。
 とはいえ、だれも聞いてないと分かっていても、それでも恥ずかしい。
 乙女の恥じらいは、まだ捨てたくない。

 それにしても、今日はいつもよりなんだか感じまくって、気持ちがいい。甘ったるい声がいつも以上に洩れてしまう。
 よく分からないけれど、感じてしまうのだから仕方がない。
 だけど恥ずかしいから、必死に唇を噛みしめて、声が出ないように頑張ることにした。そうすると、ますます感じるような気がするけれど、そうなったら早く終われるからいい……としよう。

 ──で、もったいぶらずになにしてるか言えって?
 あー、はい、そうですよね。

 なにしてるのかって、そりゃあ一人でナニですよ。

 え、分からない?
 ですよね、はい。

 しかたがないので、はっきり言います。

 自慰ですよ、自慰!
 寝起きの、頭も身体もゆるーいときだからこそできる、オナニーですよ!
 悪いかっ!

 あ、引きましたか。
 そうですよね。わたしもいわゆる『賢者タイム』になった瞬間、毎回、自分にどん引きしていますもの。
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