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恋はいつでも平行線【完結】
第9章 *九*
     * *

 うっすらと意識が戻った感覚がして、目を開けると、周りは薄暗かった。二度寝した記憶があったから、寝過ごしたのかと思って慌てたのだけど、どうも様子がおかしい。
 なんでだろうと悩んでいると、少し遠くに女性の後ろ姿が見えた。
 あれ、ここってわたしの部屋だよね? と脳内で確認して周りを見ると、薄暗いけれど、見覚えのある部屋。
 とここで、祖母が言っていたことを思い出した。
 神田家の女子は、まれに夢でお告げのようなものを受け取ることがあるという。
 それとはちょっと違うような気がしないでもないけれど、でも、自分の部屋に見知らぬ女性がいるところと、現実感のなさが祖母が前に言っていた話と一致する。

 その女性というと、癖毛なのか、パーマなのか分からないけれど、艶のある真っ黒な髪の毛は少しウェーブしていて、肩より長いくらい。それだけだったら特に記憶に残らないと思うけれど、目にも鮮やかな真っ赤なドレスを着ていた。
 女性は最初、わたしに背を向けていたのだけど、わたしがあまりにも凝視したからなのか、振り返った。
 そして、その女性はわたしを認識した途端、目にも鮮やかな赤い口紅がべったりと塗られた口の端を思いっきり上げて、にたぁ~と笑みを浮かべた。
 その笑い方がすごく恐ろしくて、わたしは本能的に危険を感じて、後ずさりをした。
 すると女性はさらに笑い、すっと目を細め、それから口を開いた。

『先ほどの精液、美味しかった。もっと寄越せ』

 と。

 いやあれ、わたしのじゃないし!
 それにわたしにそんなこと言われても困るんだけど。

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